【2025年10月更新】小規模企業共済と法人保険の違い|税務と受取課税の判断基準
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執筆者河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)

小規模企業共済
法人保険
節税
退職所得
受取課税
解約返戻金
目次
まず結論:2025年の最短判断フレーム
経営者・フリーランスの老後資金と会社の資金繰りで迷ったら、まずは「掛金の入り口」と「受取の出口」の税目を切り分けて整理しましょう。個人の老後資金づくりは 小規模企業共済 が王道。掛金は全額が所得控除になり、受取は退職金扱い(または年金扱い)が基本です。会社の資金繰り・退職金原資づくりは 法人保険 を使いますが、2019年以降は返戻率帯ごとに損金算入の可否と期間が厳密に決まっています。どちらも“節税ワード”に振り回されず、出口の受取課税を数値で見比べるのが近道です。
目的別の軸(まずここを見る)
- 1個人の老後資金を最優先なら小規模企業共済で掛金全額を所得控除にして手取りを底上げする。
- 2会社の資金繰り・福利厚生・退職金原資の準備なら法人保険だが、2019年ルールの資産計上期間と取崩しを前提に設計する。
- 3受取を一時金にするか年金にするかで税目が変わるため、出口から逆算して掛金・期間・解約時期を決める。
- 4解約返戻金は原則その事業年度の益金に入るため、決算期や退職金支給時期との並べ方で実効税率が変わる。
- 5短期退職手当等の300万円ラインや、同一年・前4年内の重複ルールを踏まえ、退職金の分割や支給順序を調整する。
小規模企業共済の“入り口”:掛金控除と上限
小規模企業共済の掛金は月1,000〜70,000円(500円単位)で、支払った年の全額が「小規模企業共済等掛金控除」です。国税庁のタックスアンサーでも明記されています。(No.1135 小規模企業共済等掛金控除)。控除は年末調整または確定申告で反映し、証明書の添付(または二次元バーコード付出力の提出)が必要になります。日々のキャッシュフローに無理が出ない範囲で“年内の控除最大化”を図るのが基本です。
法人成り・役員就任後の取り扱いは?
個人事業から法人化しました。個人時代の小規模企業共済は続けてよい?受け取りは退職金扱いになりますか?

共済金の税目は事由と受取方法で異なりますが、独立行政法人(中小機構)からの一定の共済金・解約手当金は退職所得に該当し得ます。(退職所得となるもの)の中に小規模企業共済の記載があり、また制度概要でも“一括は退職所得、分割は公的年金等の雑所得”の整理です。(制度の概要)。法人成りの節目で“いつ・どの形で受け取るか”をあらかじめ設計しておくと安心です。
共済の“出口”:一時金か年金かで税目が変わる
共済金の受け取り方で 受取課税 が変わります。一括は退職所得になり、勤続年数に応じた退職所得控除と(短期退職手当等の一部例外を除き)1/2課税の効果が期待できます。(退職所得となるもの)。分割受取は公的年金等に係る雑所得となり、公的年金等控除が使えます。最新の控除水準は「合計所得金額の計算(令和7年分)」にまとまっています。(合計所得金額の計算について(令和7年分))。どちらが有利かは、他の所得や将来の収入見込み、社会保険料や住民税の影響まで含めて“総手取り”で比較するのがコツです。

老後資金は“どう貯めるか”より“どう受け取るか”で手取りが変わります。出口から逆算して入口(掛金・期間)を決めましょう。
法人保険の“入り口”:2019年ルールの要点
2019年以降、返戻率の高い定期・第三分野の法人保険は、最高解約返戻率の帯(50%超70%以下/70%超85%以下/85%超)に応じて保険料の一部を資産計上し、所定期間で取崩す扱いです。年換算保険料30万円以下の特例や、最高返戻率85%超の厳格な按分も示されています。一次情報は国税庁に公開されています。(定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い)。設計段階で「資産計上期間」「取崩期間」「解約返戻金の推移」を、会計と税務の両面で見える化しておくのが前提条件です。
法人保険の“出口”設計で外せない実務ポイント
- 1解約返戻金は解約時の事業年度の益金に算入されるのが原則で、決算期や赤字・黒字の状況次第で実効税率が変わるため、解約タイミングを管理する。
- 2役員退職金の原資として使う場合は、解約益と退職金の“同年度並べ”で損益を中和させやすいが、帳簿上の相殺ではない点(それぞれの正しい計上・源泉・決議)が重要。
- 3退職金の税計算は短期退職手当等(勤続5年以下)に300万円の判定があり、1/2課税の適用が限定され得るため、支給額・支給年の分散に注意。(短期退職手当等Q&A)。
- 4複数の退職金や退職関連一時金が“同一年”や“前年以前4年内”に重なると退職所得控除の計算が調整されるため、支給順序と間隔を事前に確認する(DCの一時金は別枠で19年内の特例あり)。
- 5保険解約から退職金支給、議事録・源泉・納付までの“決算カレンダー”を引き、内部統制と証跡づくりを同時に進める。
受取課税の比較:一時金と年金、会社と個人
個人の受取は、一時金なら 退職所得(退職所得控除+原則1/2課税)、年金なら公的年金等の雑所得(公的年金等控除)です。会社の法人保険は、満期・解約時は原則として法人の益金・損金に計上され、死亡保険金は受取人が法人なら益金、遺族が受け取る場合は相続・所得・贈与の区分に分かれます。いずれも住民税や社会保険料に波及する局面があるため、受取年の他所得・配当・不動産収入との“合算後のブレ”まで点検しておくと安心です。
老後資金はどちらが有利?ケース別の道筋
役員の老後資金、共済と法人保険どちらを優先すべき?

個人の“ベース年金”を厚くしたいなら共済で掛金全額控除→退職金または年金受取が王道。会社の余剰資金で退職金原資を作るなら法人保険ですが、2019年ルールに適合した設計と、解約益と退職金の同年度運用・源泉実務まで含めて動くのがコツです。最終的には双方を“二刀流”にして、受取の年・金額・税目を分散する設計が有利なことが多いですよ。
実務手順:目的 → 税区分 → 出口の3ステップ
実務の順番はシンプルです。まず目的(老後原資・退職金・資金繰り)を言語化。次に税区分(共済は一時=退職所得/分割=公的年金等、法人保険は益金・損金)を決定。最後に出口の年と方法(同一年重複・前4年内調整、短期退職手当等の300万円ラインなど)をスケジューリングします。退職金の源泉や申告・控除計算の細部は、国税庁のQ&Aが実務の拠り所になります。(短期退職手当等Q&A)。
失敗例から学ぶ留意点
“掛ければ節税できる”発想で動くと、解約返戻金の益金や一時金の集中で実効税率が跳ね上がることがあります。小規模企業共済は、年度の所得状況に合わせて掛金を増減し、出口は一括・分割の税目比較を。法人保険は、2019年ルールの資産計上・取崩しを無視した短期払や、高返戻率期の“駆け込み解約”が決算を歪めます。どちらも“受取年の他所得・控除・社会保険料”まで含めた総合設計でリスクを減らしましょう。

退職金の受取間隔について“10年ルール”と呼ばれる俗説がありますが、実務の根拠は同一年合算や前年以前4年内の重複、DC一時金の19年内などの条文・通達です。言葉に惑わされず条文ベースで設計を。
無料AI相談で最短設計へ(LINEで完結)
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まとめ:重要ポイント
- 1小規模企業共済は掛金全額控除、受取は一時(退職所得)か分割(公的年金等)で税目が変わる。
- 2法人保険は2019年ルールで損金・資産計上・取崩しが厳格化。解約益の計上年と退職金の支給年をセットで設計する。
- 3短期退職手当等の300万円ライン、同一年・前4年内の重複調整を把握し、受取の年と金額を分散する。
- 4住民税・社会保険料への波及まで含めて“総手取り”で比較する。
- 5迷ったら出口から逆算し、一次情報の条文・通達に沿って実務を進める。
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