【2025年11月更新】総合福祉団体定期保険 損金と死亡退職金|実務3手順
更新:
執筆者山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)

総合福祉団体定期保険
損金
死亡退職金
弔慰金
福利厚生規程
法人保険
税務調査
目次
なぜいま総合福祉団体定期なのか:2025年の背景
総合福祉団体定期保険(グループ定期)は、解約返戻金のない1年更新型のため、2019年の法人保険課税ルール厳格化の影響を受けず、保険料の全額損金処理が可能です。国税庁の取扱いは、定期・第三分野の法人契約について受取人区分ごとに損金算入を認める枠組みで明示されています(後段リンク参照)。加えて、企業のデジタル事務化により、規程提出・同意取得・名簿更新がオンライン中心になり、中小企業でも運用負担が下がっています。福利厚生規程に沿う設計が必須で、2024年の最高裁判決を踏まえた死亡退職金の受取人規定の見直しも進みました。制度の基本と税務・会計の段取りを、最新版の一次情報リンクで実務的に整理します。
この記事でわかること
- 1総合福祉団体定期の保険料を全額損金にできる条件と注意点
- 2死亡退職金・弔慰金の非課税枠の使い分けと計算の要点
- 3役員死亡退職金の決裁(株主総会)・未払計上のタイミング設計
- 4福利厚生規程と保険設計の整合の取り方、提出書類の具体
- 5税務調査で見るポイントと、年度跨ぎの損益偏在回避の実務
制度の基礎と損金要件(受取人設計が鍵)
総合福祉団体定期は、企業(団体)が契約者、役員・従業員が包括加入する1年定期。受取人の設計に応じた税務は国税庁のタックスアンサーに明確です。
- 会社受取:期間対応で損金算入(福利厚生費等)。(No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い)
- 遺族受取(会社負担で全員加入):原則福利厚生費として損金算入。(No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い) 恣意的に特定者だけを対象にすると、その保険料が給与認定され得るため、全員加入と合理基準での除外運用が実務の要です。商品面の概要は、主要社で共通(解約返戻なし・年次更新・規程連動)で、例えば(総合福祉団体定期保険|商品説明)に基本構造が整理されています。
一部役員だけ加入は可能?
役員だけ数名、福利の枠外で手厚くしたいのですが、総合福祉団体定期で運用できますか?
原則は全員加入です。特定者のみ加入すると保険料が給与認定されるリスクがあります。会社受取設計+社内規程に基づく支給、または全員対象の遺族受取設計が安全です。税務の枠組みは(No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い)で確認できます。
全員加入と同意・告知の実務(オンライン化の進展)
加入時は、制度周知と同意取得(包括同意または個別同意)、必要に応じた告知の取り扱いが求められます。事務の具体は生命保険会社の手続ガイドに詳細があり、提出書類・名簿突合・更新前の案内タイミングが標準化されています(例:(総合福祉団体定期保険 お手続きガイド))。名簿の異動(入社・退職・保険金額変更)や、包括同意を用いる際の代表者の扱いなど、運用ルールを社内フローに落とし込むと、調査時の照会にも強くなります。
死亡退職金と弔慰金:非課税枠の基本と線引き
在職者の死亡に伴う死亡退職金は、相続税の「みなし相続財産」。支給が死亡後3年以内に確定したものは、合算額のうち「500万円×法定相続人の数」まで非課税です。(No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金) さらに、弔慰金のうち退職手当等に該当しない部分は非課税枠があり、業務上死亡は「最終月給の3年分」、業務外死亡は「最終月給の6か月分」が目安です(退職手当相当分は相続課税の対象)。両者は社内決定・通知書で明確に区分することが実務のポイントです。補助的な専門家解説も参照できます(例:(死亡退職金・弔慰金の相続税非課税枠について))。
役員死亡退職金の税務・会計 3手順
- 1株主総会決議で金額・支給先を確定(功績倍率の目安は社長2〜3倍、役員1.5〜2倍などの範囲で規程整備)
- 2同一事業年度に保険金収入と退職金支出を揃えるか、決算時に未払計上で発生主義に合わせる(要金額確定)
- 3税務書類は源泉ではなく退職手当等受給者別支払調書(100万円超支給で提出)—詳細は(死亡による退職の場合)
設計基準:保険金額・受取人・特約の使い分け
保険金額は福利厚生規程(死亡退職金・弔慰金)に連動。職級・勤続年数・最終報酬で算定し、規程額の範囲内で設定します。受取人は「会社受取→規程に基づき遺族へ支給」か、「遺族直接受取(会社負担で全員対象)」のいずれかを制度趣旨に沿って選択。事業継続資金にはキーパーソン上乗せなどの特約を併用可能です(制度説明の例:(在職中の従業員の死亡保障)、(総合福祉団体定期保険|商品説明)、補足解説:(総合福祉団体定期について))。
規程が設計の“物差し”です。福利厚生規程と保険設計の整合を、契約前・更新前に必ず点検しましょう。
導入〜更新〜給付の3手順(現場で止めないために)
導入:就業規則・退職金規程に死亡退職金・弔慰金の支給基準・受取人順位を明記し、労基署届出が必要な会社は届出後に契約。商品比較では受取人設計・特約・配当有無・オンライン事務の対応をチェック。(総合福祉団体定期保険 お手続きガイド) に提出書類・更新案内のタイミング(通常、応当月の約2か月前)・名簿突合の型が示されています。
更新:被保険者名簿の異動(入社・退職・金額変更)を洗い出し、期限内に提出。高齢化や料率改定による保険料変動を予算に織り込み、必要なら保障額・特約を見直し。
給付:事故発生後は社内で支給額を決定・承認し、同時に保険金請求。会社受取なら益金計上+損金計上を同年度に合わせる運用が基本。遺族直接受取設計なら、社内規程額との整合を確認します。
決算期をまたぎそう…どうする?
期末直前に訃報があり、保険金と退職金が年度をまたぎそうです。税負担の偏りが心配で…
当期末までに金額と支給先が確定していれば、退職金は未払計上で当期損金とできます。役員分は株主総会決議で金額確定が前提です。保険金の受領時期は保険会社と調整できるケースもあるため、担当者と早めに相談しましょう。根拠は(死亡による退職の場合)の取扱いが参考になります。
税務調査で見られるポイントと回避策
調査では、1)福利目的の実態(全員加入か、継続運用と給付実績)、2)支給・保険金額の適正(役員功績に比して過大でないか)、3)社内手続の適正(規程整備・決議・書類保存)が確認されます。対策は、規程と保険設計の一致、決裁・請求・支払の証跡を年次で整えること。期末に向けては、未払計上や受領時期の調整で損益偏在を抑える実務設計を。商品・制度の要件は各社資料に明記があるため、提出書類や期限管理をガイドに沿って運用すると安全です(例:(総合福祉団体定期保険 お手続きガイド))。
モデル事例の考え方(従業員50名の標準設計)
具体の保険料は年齢構成・性別・保障額・配当有無で大きく変わるため、ここでは設計の手順を示します。
- 死亡退職金:職級・勤続・最終報酬に基づく算式を規程化。
- 弔慰金:業務上・業務外の非課税枠(3年分/6か月分)を明記。
- 受取人:会社受取+規程支給(原資確保)か、遺族直接受取(福利の見える化)かを組合せ。
- 事務:名簿・異動・更新のタイミングは保険会社ガイドの様式で統一。 見積りは複数社で比較し、配当有無・特約・オンライン対応を加点評価します(制度概要は(総合福祉団体定期保険|商品説明)も参考に)。
FAQ:よくある質問
Q. 退職者・OBも対象にできますか?
A. 原則は現役在籍者です。例外の設計は通達等に照らし慎重に。OB継続加入は福利趣旨から逸脱しやすく、税務上の説明責任が重くなります。
Q. 任意加入(従業員負担)を併用できますか?
A. 可能です(企業負担の全員加入+任意加入の組合せ)。ただし任意部分は従業員の私的保険で会社損金の対象外。
Q. 弔慰金と死亡退職金の配分は?
A. 非課税枠を踏まえ、弔慰金は「退職手当等に該当しない部分」を明確に決定し、死亡退職金は500万円×法定相続人の数の枠を活用。社内通知で区分を明記してください。
法制度・判例アップデート(2024年最高裁の示唆)
2024年3月の最高裁判決を踏まえ、死亡退職金の受取人規定の整備・合理化が企業実務で重視されています。社内規程の受取人順位・範囲(配偶者、子、父母、事実婚・同性パートナーの扱い等)を明確化し、規程に基づく支給判断・証跡保存を強化しましょう。概要解説は法律事務所のニュースレターが参考になります((最判令和6年3月26日を踏まえた企業の死亡退職金支払の運用))。
まとめ:重要ポイント
- 1解約返戻金なしの1年定期は2019年改正の対象外で、保険料は原則全額損金。受取人設計と全員加入が前提
- 2死亡退職金は「500万円×法定相続人」の非課税枠、弔慰金は業務上3年分/業務外6か月分の範囲を明確区分
- 3役員死亡退職金は株主総会で金額確定→同年度通算か未払計上で偏在回避。調書の提出要件を遵守
- 4福利厚生規程と保険設計の整合を契約前・更新前に必ず点検。提出書類・期限は各社ガイドで運用
- 52024年最高裁を踏まえ受取人規定を再点検。事務はオンライン化で効率化し、証跡保存を徹底
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