【2025年11月更新】生命保険 被保険者変更の可否|条件と税と手続き早見表
更新:
執筆者山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)

生命保険
被保険者変更
契約者変更
受取人変更
非課税枠
贈与税
相続税
目次
はじめに:迷いがちな“名義の変更”を最短整理
子育てや離婚、相続の局面で「保険の名義を替えたい」と悩む方が増えています。結論から言うと、被保険者変更は原則できません。一方で契約者変更や受取人変更は条件を満たせば可能で、税の扱いも組み合わせで大きく変わります。本記事は2025年11月時点の一次情報に基づき、可否の線引き、最新の税実務(按分課税・非課税枠・7年ルール)、最短の手続きと失敗防止策を「早見」で整理します。家族の合意形成、書類準備、税まで一体で進めれば、迷いはぐっと減ります。
まず押さえる結論(早見)
- 1被保険者(保障の対象)の変更は原則不可で、他人へ差し替えるには新規契約が必要です。
- 2契約者(保険料負担者)と受取人の変更は所定の条件下で可能ですが、被保険者本人の同意が求められるのが一般的です。
- 3税は「契約者(誰が払ったか)×受取人(誰が受け取るか)」で決まり、途中の名義変更があると按分課税になります。
- 4学資保険など一部では契約者変更時に健康告知や医的査定が必要になる取り扱いがあります。
- 5契約者死亡時は「生命保険契約に関する権利(解約返戻金相当額)」が相続税の対象になり、調書提出の対象拡大により申告漏れが指摘されやすくなっています。
なぜ被保険者は途中で替えられないのか
保険料は契約時点の被保険者の年齢・健康状態をもとに算定され、告知・査定によりリスクを見積もっています。契約成立後に対象者を他人へ差し替えると、当初の算定前提が崩れるため、約款上も実務上も認められていません。終身・定期・養老・収入保障・個人年金など商品別でも同様で、保障対象を別人にしたい場合は解約・新契約(転換を含む)で対応します。被保険者を決める段階で「誰をどの期間守るか」を設計しておくことが重要です。
よくある疑問:「被保険者は替えられないなら、何を替えられる?」
夫契約・夫被保険者の終身保険を、妻や子に“被保険者”を替えたいのですが…
被保険者の変更は原則不可です。その代替は「契約者変更」や「受取人変更」です。たとえば保険料の負担を夫→妻に替える、受取人を妻→子へ見直す、といった変更なら所定書類と同意で進められます。税の扱いが変わるため、受取時の税区分(相続税・贈与税・一時/雑所得)まで設計してから手続きしましょう。
契約者変更・受取人変更の条件(実務の骨子)
契約者変更は多くの会社で可能ですが、基本要件は共通です。被保険者本人の同意が必要、現契約者と新契約者の署名押印・本人確認書類・印鑑証明などが求められます。新契約者の範囲は「被保険者本人・配偶者・近親者(2〜3親等)」に限定する案内が一般的で、第三者への名義変更はモラルリスク回避の観点から認められません。米国籍・米国永住権の方を新契約者にできない取り扱いがある、法人へ変更が可能な取り扱いがある等の制限は公式FAQで確認できます。参考: (契約者は変更できますか。)/(契約者を変更する場合の手続き方法)(ページ本文の質問タイトルに準拠)
名義変更の段取りを“最短”で通すチェックリスト
- 1保険会社に変更希望を連絡し、所定の「契約者変更請求書」「受取人変更届」等の一式を取り寄せます。
- 2現契約者・新契約者・被保険者(同意欄)の署名押印、本人確認書類、印鑑証明(3か月以内発行)を揃え、不備がないか二重チェックします。
- 3学資保険など告知・医的査定が必要な商品は、健康状態申告書の記載や診査の予約まで同時進行で段取りします。
- 4提出後は社内確認に1〜2週間が目安。不備が出たら即日再提出できるよう、連絡手段(電話・マイページ)を一本化しておきます。
学資保険特有の“告知・査定”に注意
学資保険では、契約者が途中で替わると「払込免除特約」の継続可否に関わるため、新契約者の健康状態の告知や医的査定が必要になる取り扱いがあります。離婚で夫→妻に契約者変更する場面などでは、妻の健康状態次第で免除特約の引継ぎが制限されることも。参考: (よくあるご質問(FAQ))(健康告知・査定の案内例)。
名義を替える前に「誰が払う/誰が受け取る」を先に決める。税の結論はそこから自動的に決まります。
税の早見:組み合わせ別の課税と按分
税の判断は「保険料負担者(契約者)×受取人×被保険者」の三者関係で決まります。代表パターンは次のとおりです。契約者=受取人・被保険者は別人の死亡保険金は一時所得(または受取形態により雑所得)。契約者=被保険者で受取人が相続人なら相続税(非課税枠あり)。契約者≠被保険者≠受取人の三者全員が異なるなら贈与税。根拠と詳細は国税庁の解説を確認できます((No.1750 死亡保険金を受け取ったとき)、(No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金))。途中で契約者を替えた場合には、負担期間に比例して「旧契約者分」「新契約者分」に按分して別の税目が適用されます。わかりやすい図解は公益財団のQ&Aが参考になります((契約者や受取人を途中で変更した場合の税金は?))。
非課税枠500万円×法定相続人の適用条件
死亡保険金で相続税の非課税枠「500万円×法定相続人の数」が使えるのは、受取人が被保険者の法定相続人である場合のみです(連れ子・孫などの指定は要件の確認が必要)。相続人以外を受取人にすると非課税枠は使えず、贈与税や所得税扱いで負担が重くなることがあります。一次情報は(No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金)。
契約者死亡時の承継と「権利」の課税・調書
契約者が死亡したら、被保険者が生存している契約は相続人が承継できます。このとき相続税の対象になるのが「生命保険契約に関する権利」、すなわち死亡時点の解約返戻金相当額です((No.4660 生命保険契約に関する権利の評価))。さらに2018年以降、支払調書の提出対象が拡大され、契約者死亡に伴う名義変更や支払時の情報が税務へ報告されるため、申告漏れは指摘されやすくなっています(制度趣旨の解説:(生命保険契約と支払調書))。承継の実務では、相続人全員の同意と代表選任、戸籍・死亡診断書・被保険者同意などの書類が必要です。
“7年ルール”の移行と名義変更の時期設計
2024年改正により、生前贈与の相続税への持ち戻し期間は段階的に7年へ延長されます。2019〜2023年の3年、2024年以降の移行期、2031年以降の7年という整理で、経過措置として「3年超〜7年以内は合計100万円まで加算しない」緩和が設けられています。名義変更(生前の契約者変更)を相続直前に重ねると、贈与の持ち戻し対象になりやすい点に注意が必要です。一次情報は(No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税))。
ケーススタディ:夫→妻→子で負担移行したとき
例)夫(被保険者)が死亡保険3,000万円、妻が当初の契約者・受取人。途中で契約者を夫へ変更、受取人は妻のまま。夫死亡時の税は、妻負担期間に対応する死亡保険金部分が一時所得、夫負担期間に対応する部分が相続税(妻が相続人)に按分されます。子を受取人にしていた期間の保険料負担者が夫なら、子が受け取る部分は贈与税ルートになり得ます。離婚時の学資保険の契約者変更では、払込免除の扱いと告知・査定の要否を事前に確認し、合意書類の整備を進めるのが安全です。第三者(赤の他人)へ契約者を変更することは、モラルリスク回避の観点から認められないのが通例です。
よくある質問Q&A(実務の要点)
Q. 遺言で受取人を替えられますか?
A. 2010年の保険法改正後の契約なら、契約者が被保険者の同意を得た上で、遺言による受取人変更が可能です(詳細は(「保険法」で、生命保険の契約はどうかわったの?))。
Q. 契約者変更はいつが有利?
A. 税は受取時に決まるため、「誰が何を受け取るか」「非課税枠の適用可否」「7年ルールの持ち戻し対象」まで見て時期を設計します。相続直前の変更は税務上の不利益につながりやすいので、前広に合意・書類準備を。
次の一歩:合意形成・書類・税まで“同時並行”で
名義変更は「家族の合意」「必要書類の収集」「税の設計」を同時並行で進めると早く確実です。保険会社のコールセンター・担当者と情報を一本化し、チェックリストで不備ゼロを目指しましょう。税の不安が残るなら、受取人・受取方法・相続と贈与の境目まで含めたシミュレーションを専門家と。オンライン相談なら忙しい方でも隙間時間で準備できます。
まとめ:重要ポイント
- 1被保険者変更は原則不可。別人を守るには新契約で設計し直すのが正解です。
- 2契約者・受取人変更は同意と親族範囲の条件付きで可能。米国籍等の制限や法人変更の扱いは各社FAQで確認します。
- 3税は三者関係で決まり、途中変更があれば按分課税。相続の非課税枠の適用可否を早めに判定しましょう。
- 4契約者死亡時は解約返戻金相当額が相続税対象。支払調書の提出拡大で申告漏れが指摘されやすくなっています。
- 5“7年ルール”の移行期は時期設計が重要。相続直前の名義変更は慎重に。
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