ほけんのAI Logo保険相談の掟

【2025年11月更新】法人保険 退職金設計|功績倍率と損金判定・出口3手順

更新:
山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)
執筆者山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)
【2025年11月更新】法人保険 退職金設計|功績倍率と損金判定・出口3手順
法人保険
退職金設計
功績倍率
損金判定
退職所得控除 10年ルール
名義変更 70%評価
No.5364-2

まず全体像:退職金と法人保険のいまを3分で把握

退職金の原資づくりに 法人保険 を使うなら、2019年の通達改正以降の“損金ルール”と、2026年適用の退職所得控除“10年ルール”を押さえるのが最短です。この記事は、功績倍率で適正額を可視化し、損金算入の線引き、社内決議の段取り、解約→支給→税務の出口まで、経営者が迷いやすいポイントを一次情報リンクで実務的に整理します。結論として、同一年度内に解約返戻金の益金と退職金の損金を並べて“結果として相殺”し、過大退職金や名義変更の課税トラブルを避ける設計が王道です。

いま押さえる税制アップデート(一次情報リンク付き)

  • 1
    2019年改正の50%・70%・85%区分により、最高返戻率が50%超の定期・第三分野保険は保険料の一定割合を資産計上し、後半で取崩します(詳細は (No.5364-2))。
  • 2
    最高返戻率が70%以下かつ一被保険者の年換算保険料合計30万円以下は、従来どおり期間経過で損金算入が可能です((No.5364))。
  • 3
    保険の名義変更は“支給時解約返戻金”評価が原則ですが、返戻金が帳簿の70%未満の低返戻期は“帳簿額”評価に(所得税基本通達36-37の改正解説、(保険契約等に関する権利の評価の解説))。
  • 4
    退職所得控除の調整期間は“5年→10年”相当へ拡大(DC一時金→退職金の順)し、2026年1月1日以後の受給から適用されます((退職所得控除の調整規定等の見直し))。
  • 5
    2026年以後、退職所得の源泉徴収票の税務署提出は“役員だけでなく全居住者に一律”義務化、DC一時金の申告書保存期間は“10年”に延長されます(同上PDF)。

2019年通達:50%・70%・85%の帯域と“30万円枠”の実務

2019年改正後は、最高解約返戻率が50%超の定期・第三分野保険は、保険期間前半で保険料の一定割合を“前払部分”として資産計上し、後半で取り崩す処理です。区分は概ね、50%超70%以下なら“40%資産・60%損金”、70%超85%以下なら“60%資産・40%損金”、85%超は“資産計上中心(取崩しはピーク後)”の運用になります(表と用語は (No.5364-2) を参照)。一方、最高返戻率が70%以下で“一被保険者・年換算保険料の合計30万円以下”の契約は、従来どおり期間経過に応じて全額損金算入(少額特例)を認める扱いです(注記の要件は (No.5364))。実務では、退任予定年に返戻ピークが重なるよう返戻カーブを確認し、資産計上の取崩しスケジュールも前倒しで整えておくと、出口で慌てません。

「解約益と退職金は仕訳で相殺できますか?」

解約返戻金が5,000万円、同額の退職金を支給予定。同じ期なら仕訳で“相殺”してしまって問題ありませんか?
山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)
仕訳上の“直接相殺”は不可です。まず解約返戻金は益金(収益)に、退職金は損金(費用)に、それぞれ同一事業年度内で計上してください。結果として課税所得はほぼ相殺されます。資産計上していた前払保険料は、返戻ピーク後の取崩しルールに従い適切に落としていくのがポイントです。

名義変更“70%評価”:低返戻期の評価額は帳簿が原則

退職金の“現物支給”として契約者を法人から役員個人へ名義変更する手法は、2021年の所得税基本通達36-37改正で評価が厳格化されています。原則は“支給時解約返戻金の額”で評価しますが、解約返戻金が“支給時資産計上額の70%未満”にある低返戻期は、“支給時資産計上額(帳簿額)”で評価します。さらに払済→復旧可能な契約の抜け穴も、帳簿額に復旧関連の損金加算で塞がれました(改正の考え方と具体文言は (保険契約等に関する権利の評価の解説))。名義変更で“安価譲渡”を狙う設計は原則無理。いまは法人が解約金を受けて同年度で退職金を支給する、まっすぐな出口が安全です。

退職所得控除“10年ルール”:2026年からの影響を予行演習

退職所得控除の“重複排除”期間が広がります。改正後は、退職金の受給年の“前年以前9年内”に“DC(確定拠出年金)の老齢一時金”を受け取っていると、勤続年数の重複調整がかかり控除額が縮みます(改正前は“4年内”)。適用は“2026年1月1日以後”の受給から。加えて、退職所得の源泉徴収票の税務署提出は“役員限定から全居住者へ”拡大、DC一時金の申告書保存は“10年”へ延長されます。条文要旨と時期は (退職所得控除の調整規定等の見直し) を確認。実務では“DC一時金→退職金”の受け取り順と間隔が手取りを左右します。60歳でDC一時金、65歳で退職金の設計は控除満額が取りづらく、70歳以後退職が“安全域”になるケースも。人事制度・就業規則の改定に合わせ、受給時期の再設計を。
山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)
退職金は節税策ではなく“功労への報い”。税務の枠内で最大化するには、根拠の明文化とタイミング設計がすべてです。

功績倍率で“適正額”を算出:社長3.0倍を目安に、根拠を可視化

役員退職金は、最終月額報酬×勤続年数× 功績倍率 が最も実務的な算式です。一般に代表取締役“3.0倍”、専務“2.4倍”、常務“2.2倍”、平取“1.8倍”、監査役“1.6倍”が目安。例えば最終月額60万円×勤続20年×3.0=退職金3,600万円。もっとも、倍率は“相場”であり法定上限ではありません。過去の報酬水準や類似企業比較、事業承継の事情などを総合して、議事録に“合理的理由”を残すことが重要です。最終月額が特殊事情で低い場合は“1年当たり平均額法”に切り替える選択肢もあります。

出口3ステップ:解約→支給→税務の段取り

  • 1
    返戻ピークと退任時期を合わせ、同一年度内で保険を解約し解約返戻金を会社が受領します。
  • 2
    株主総会で退職慰労金の支給を決議(または定款根拠)し、取締役会で具体金額・支給方法を確定します。
  • 3
    決算では解約益を益金、退職金を損金で計上し、資産計上していた前払保険料は通達の取崩しルールに沿って落とします。
  • 4
    本人から「退職所得の受給に関する申告書」を受領し、退職所得控除と1/2課税(特定役員は対象外)で源泉徴収額を算定します。
  • 5
    退職所得の源泉徴収票・議事録・保険明細の電子保存要件を満たし、税務調査に備えて時系列で書類を保管します。

会計・税務と社内決議の実務:否認を避ける“線”の引き方

資産計上と取崩しの会計フローは、返戻率帯により異なります(区分表は (No.5364-2))。社内手続では、株主総会の決議(定款根拠がなければ必須)と議事録の整備が要。分掌変更で“退職”と認定されるには、権限・報酬の大幅減や経営関与の喪失など、実質要件を満たす必要があります。退職金の損金否認を避けるには、適正額の根拠と手続の適法性の双方を丁寧に。

45歳・早期退任のケースは?

45歳で代表を退きます。最終月額を急に上げると“お手盛り”と言われそうで…どう算定すべき?
山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)
功績倍率法を基本に、直前の報酬改定を避けます。報酬が低すぎる特殊事情があるなら“1年当たり平均額法”を併用し、類似企業の退職金データや在任中の成果(売上・利益・投資回収)を根拠資料として添付しましょう。議事録に理由を明記すれば、税務の納得性が高まります。

ケーススタディで学ぶ設計と判定

60歳代表取締役:最終月額80万円×勤続25年×3.0=6,000万円。長期平準定期で原資を積み、返戻ピーク+退任を同年度で合わせ、解約益と退職金を並べて課税所得を圧縮。45歳早期退任:平均額法で“過大”を避けつつ、功労加算の根拠は定量指標で提示。死亡退職金:終身×定期の組合せで死亡保障と積立を両立し、法定相続人×500万円の非課税枠の活用や受取人設計を先に決めておく。
山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)
返戻率の“山”に退任を合わせるだけで出口の成功確率は上がります。資金繰りを日単位で見ながら、社内決議・税務の締切に間に合わせる運用を。

よくある失敗3つと回避策

過大退職金の否認:功績倍率“3.0倍超”は説明責任が跳ね上がります。相場・類似企業比較・議事録の理由付けで防御を。名義変更の誤用:低返戻期は“帳簿額”評価のため“安価譲渡”は成立しません。通達改正(36-37)に沿った設計を。タイミングずれ:解約益と退職金の年度がズレると法人税負担が膨らみます。返戻ピークの前後で“資産計上・取崩し”の時期管理を徹底しましょう。

まとめ:重要ポイント

  • 1
    退職金の適正額は功績倍率法で算定し、議事録に“理由”を明記して納得性を高める。
  • 2
    2019年の損金ルール(50%・70%・85%)と“30万円枠”を前提に保険選定と会計フローを設計する。
  • 3
    名義変更の“70%評価”により現物支給の安価譲渡は不可。法人解約→同年度支給の王道で進める。
  • 4
    退職所得控除“10年ルール”の影響を想定し、DC一時金と退職金の受取時期を再設計する。
  • 5
    書類の電子保存・源泉票提出拡大に備え、出口の年は証憑一式を時系列で管理する。

ぜひ無料オンライン相談を

退職金額の妥当性評価、保険の帯域別損金処理、出口の年度合わせなどは、個社事情を踏まえた設計が命です。オンラインの無料FP相談なら、時間や場所の制約なく、最新ルールに沿った“攻守”の設計を中立的に比較できます。LINEで気軽に相談、必要なら面談へ。迷う前に無料で棚卸しして、失敗しない実行に移しましょう。

🎁今なら面談後アンケート回答で
1,500円分全員プレゼント!

カフェで相談する様子

関連記事一覧

【2025年11月更新】外貨建て保険は要る?判断チェック|為替と手数料の線引き

【2025年11月更新】外貨建て保険は要る?判断チェック|為替と手数料の線引き

外貨建て保険の要否を2025年のKPI・為替・手数料で即チェック。平均コスト・リターンや為替コスト事例、年金源泉10.21%の税まで一次情報リンクで整理し、新NISA/iDeCoとの使い分けと出口設計を具体化。

【2025年11月更新】変額保険“やめたほうがいい”は本当か|数字で検証と判断基準

【2025年11月更新】変額保険“やめたほうがいい”は本当か|数字で検証と判断基準

変額保険の真偽を2025年最新データで検証。仕組み・費用・税制を数字で比較し、新NISA・iDeCoの使い分け、規制改正の要点、併用設計まで実践的に整理。

【2025年11月更新】生命保険は何歳まで要る?60代・70代の判断チェック

【2025年11月更新】生命保険は何歳まで要る?60代・70代の判断チェック

60代・70代の生命保険は“差額×期間”で最短判定。入院食事1食510円・介護室料相当額260円/日・遺族厚生年金5年有期(2028)・在職老齢62万円(2026)を数字で反映し、残す/減らすの線引きと実践手順を具体化。

【2025年11月更新】医療保険 改定対応|入院食事510円の設計基準

【2025年11月更新】医療保険 改定対応|入院食事510円の設計基準

入院食事代は1食510円。食事は高額療養費の対象外で、1日1,530円の自己負担が積み上がります。低所得の軽減、14日・30日試算、短期入院に強い設計と見直し手順を一次資料リンクで実務解説。平均在院日数や付加給付チェック、年代別配分、FP相談の2ステップ案内付き。

【2025年11月更新】生命保険 オンライン加入と対面の違い|失敗回避3基準(個別相談可)

【2025年11月更新】生命保険 オンライン加入と対面の違い|失敗回避3基準(個別相談可)

2025年の最新データ・制度・金利を根拠に、生命保険のオンライン加入と対面加入の違いを実務で整理。失敗回避3基準と実践手順、一次情報リンク付きで最短判断。(個別相談可)

【2025年11月更新】学資保険 中途解約の落とし穴|返戻金・税・再設計基準

【2025年11月更新】学資保険 中途解約の落とし穴|返戻金・税・再設計基準

学資保険の中途解約は返戻率・税・家計が絡みます。一時所得50万円控除・贈与税の線引き、払済・減額・貸付の代替策、新NISAの非課税枠まで一次情報リンクで再設計。