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【2025年10月更新】法人保険 名義変更の税務|退職金評価と出口設計

更新:
河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
執筆者河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
【2025年10月更新】法人保険 名義変更の税務|退職金評価と出口設計
法人保険 名義変更
退職金 評価基準
所得税基本通達36-37
9-3-5の2
70%ルール
出口設計 退職金
相続 贈与 7年ルール

はじめに:名義変更と退職金設計の“いま”を最短整理

経営者の退職金原資づくりに生命保険を使うと、退任時に保険の名義変更や解約返戻金の活用が選択肢に入ります。ただし2021年の通達改正で評価ルールが厳格化し、加えて相続・贈与の“7年ルール”が本格運用に移行中です。本記事は、名義変更時に何が課税対象になるのか、退職金の評価基準(同業類似・功績倍率)と、所得税基本通達36-37の**“70%ルール”**に沿った適正価額の出し方、法人・個人・贈与の分岐、出口(受け取り方)までを、一次情報リンク付きで実務目線に落とし込みます。最終的に、自社の事情に合う安全な設計と段取りがわかるはずです。

この記事でできること(5分で全体像)

  • 1
    名義変更の評価方法と“70%ルール”を一次情報で確認して、過去の節税スキームとの違いを理解できる。
  • 2
    法人・個人・贈与・相続の課税ルートを図解イメージで整理し、間違いやすい論点を回避できる。
  • 3
    退職金の同業類似・功績倍率の枠組みで、過大認定を避ける社内根拠(規程・決議)の作り方がわかる。
  • 4
    出口設計(一括・現物・分割)の税務差と資金繰り影響を比較し、自社の正解を選べる。
  • 5
    名義変更の段取りチェックリストで、証跡づくりと税額・キャッシュフロー試算を漏れなく進められる。

改正の要点:36-37“70%ルール”を一次情報で確認

2021年の所得税基本通達36-37改正により、低解約返戻金型の評価が見直されました。原則は「支給時(名義変更時)の解約返戻金」で評価ですが、支給時解約返戻金が「支給時資産計上額の70%未満」の保険(法人税基本通達9-3-5の2の対象)を役員等に支給する場合は、評価額を「支給時資産計上額」に引き上げます。払済へ変更して抜け道にするケースも、元契約の資産計上額に“戻す”規定が設けられています。一次情報は国税庁の解説をご覧ください。(保険契約等に関する権利の評価に関する所得税基本通達の解説)(令和3年改正、附則あり)。

対象保険と経過措置・線引き

“70%ルール”の対象は、法人税基本通達9-3-5の2の適用を受ける定期保険等(逓増・長期平準など)です。評価は次のように整理できます。
  • 低解約返戻金型の該当契約で、名義変更時の解約返戻金<資産計上額×70% → 評価は「資産計上額」。
  • 低解約返戻金型でない(養老・終身の一般的な設計を含む) → 原則「解約返戻金」で評価。
  • 払済に変更してから支給→復旧可能な払済等は、資産計上額+過去損金算入額を評価額に加算。
経過措置として、令和3年7月1日より前の支給は従前の評価(原則:解約返戻金)。詳細な文言は前掲の国税庁PDFで確認できます。

「70%」は何に対する割合?

“70%ルール”って、具体的に何の70%ですか?自社の決算書のどこを見れば判断できますか。
河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
支給時点の「資産計上額」(前払保険料や未収剰余金の合計)に対する70%です。名義変更時の解約返戻金がこの70%未満なら、評価は返戻金ではなく資産計上額に引き上がります。決算書の前払保険料(保険別内訳)や保険会社の返戻金証明で、双方の金額を同日に突き合わせるのが実務の型です。根拠は国税庁の(保険契約等に関する権利の評価…解説)です。

税務の基本設計:法人・個人・贈与の分岐

契約者(法人)→契約者(個人)への変更は、法人から個人へ保険契約上の権利を支給・譲渡する行為です。
  • 法人側:支給額(評価額)を退職金と位置づければ損金算入(適正額の範囲)とし、帳簿の資産計上額を取り崩します。
  • 個人側:在職中なら給与課税、退職時なら退職所得課税(退職所得控除+1/2課税等)となるのが基本。
  • 贈与・相続との関係:契約者変更“そのもの”には贈与税はかかりませんが、変更後に新契約者が解約して返戻金を受け取ると、その返戻金は“保険料負担者からの贈与”とみなされ贈与税課税になります(国税庁の質疑応答)。根拠は(生命保険契約について契約者変更があった場合)
この分岐理解が、受取人の設計と解約・満期・死亡時のタイミング設計の出発点になります。

退職金の評価基準:同業類似と功績倍率の使い方

役員退職金は、在職期間や退職事由、同業類似・功績倍率などを総合考慮し、過大と認められない範囲で損金算入が可能です。実務では、同業・同規模の支給実績から功績倍率(退職金÷最終月額報酬÷勤続年数)を推計する「平均功績倍率法」、特別功績を反映する「最高功績倍率法」、1年当たり平均額を乗じる方法などが参照されます。
重要なのは、社内規程・株主総会決議などで「算定根拠」を明文化し、議事録や計算ワークシートを残すこと。名義変更による保険契約の現物支給を退職金の一部に組み込む場合も、評価額・控除・1/2課税の整理を“文書で”紐づけておくと調査対応がスムーズです。
河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
退職金は“後払いの報酬”。金額の妥当性と評価の根拠、そして証拠の三点セットが、税務もガバナンスも強くします。

出口設計の比較:一括・現物・分割の税務差

  • 一括(現金):適正額の範囲で全額損金、受給者は退職所得課税(控除+1/2)。法人の資金流出が一時点に集中。
  • 現物(保険契約の承継):評価額(通常は解約返戻金、低解約型は改正ルール)を退職金として計上。承継後に解約すれば個人に一時所得(または贈与税の判定に留意/保険料負担者の関係次第)、継続・死亡時は相続税ルート(相続人受取なら非課税枠あり)。
  • 分割・年金化:一定の分割は退職所得の源泉按分で実務運用されますが、長期・定期の退職給付は雑所得(退職年金)扱いとなる場合があり、退職所得より不利になることがあります。複数年・長期分割の設計は税理士と要検討です。

名義変更の段取りチェックリスト

  • 1
    同日基準で“名義変更時点”の解約返戻金と“支給時資産計上額”を取得し、70%判定を行う。
  • 2
    対象契約が9-3-5の2の適用対象か、払済の復旧可否を含めて約款・設計書で確認する。
  • 3
    退職金規程と株主総会決議で、保険契約の現物支給や評価額の算定根拠・支給目的を明記する。
  • 4
    退職所得控除・1/2課税の見積り、贈与・相続ルートの可能性(受取人設計とタイミング)を事前試算する。
  • 5
    法人の損益・資金繰り(退職金支給年度の利益調整)と個人のキャッシュフロー(解約・継続・相続)の3表を作る。

商品別の実務:逓増・長期平準・養老・終身・第三分野

  • 逓増・長期平準(9-3-5の2の対象):名義変更時は“70%ルール”により、評価が資産計上額に引き上がる場面があるため要注意。低返戻期の名義変更→即解約の“旧来スキーム”は通用しません。
  • 養老:原則、評価は解約返戻金。満期金は会社受取り→退職金支給がオーソドックス。直前名義変更で個人が満期金を受ける設計は、税区分(退職/一時)や会社の資産計上との整合を要確認。
  • 終身:多くは原則返戻金評価。低解約返戻期間を持つ設計もあるため、9-3-5の2の適用外でも実質価値と税務の整合に留意。名義変更せず死亡退職金の原資として持ち続ける選択も。
  • 第三分野(医療・がん):返戻金ゼロ〜小で評価ゼロが多い。名義変更の課税は生じにくいが、給付金の税区分(原則非課税・雑所得等)は個別確認。

ケーススタディ:NGとOKの分岐

低返戻期に名義変更して、すぐに個人で解約して返戻金を受け取るのはダメですか?
河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
NG寄りです。名義変更自体は贈与課税なしですが、直後に個人が返戻金を受けると“保険料負担者からの贈与”とみなされ贈与税の対象になり得ます((生命保険契約について契約者変更があった場合))。一方、退職時の現物支給として評価額を退職金に組み入れ、個人は一定期間継続や死亡時の相続税非課税枠(500万円×法定相続人)活用を視野に設計するのがOK例です。

2025年以降の論点:相続・贈与“7年ルール”の本格適用

2024年贈与から相続への加算期間が“3年→7年”に延長され、段階的に本格適用に移行します。国税庁タックスアンサー(No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税))が最新の整理です。
  • 令和9年1月1日〜令和12年12月31日の相続:令和6年1月1日以後の贈与が加算対象(相続前3年超〜7年以内は“合計100万円まで”加算除外)。
  • 令和13年1月1日以後の相続:相続開始前7年以内の贈与が全量加算(3年超部分の100万円除外は終了)。
名義変更後の解約返戻金や死亡保険金の課税ルート設計は、“いつ誰が保険料を負担したか”と“相続開始の時期”で結果が変わります。贈与・相続と保険の設計は、時系列で必ず突き合わせましょう。

簡易シミュレーション:評価と資金繰りの見方

例)逓増定期(9-3-5の2対象)を退職時に現物支給。名義変更時の解約返戻金800万円、支給時資産計上額1,200万円。
  • 評価額は“70%ルール”により1,200万円(800万円<1,200万円×70%=840万円に該当)。
  • 法人:退職金1,200万円を損金算入、前払保険料の帳簿残を取り崩し(差額は損益)。
  • 個人:退職所得として1,200万円を他の退職金と合算し、退職所得控除・1/2課税を適用。
  • 承継後の解約可否・時期、受取人変更、死亡時の相続非課税枠まで“分岐表”で意思決定。
このように、評価が資産計上額に引き上がると、法人の損金計上額・個人の課税ベースがともに変わります。決算・退職時期・他の退職給付との兼ね合いまで一体で設計してください。

まとめと次の一手:迷ったら“証跡と順番”から

結論として、名義変更の肝は「評価(70%ルール)」「課税ルート(給与/退職/贈与/相続)」「証跡(規程・決議・金額証明)」の3点です。まず同日基準で返戻金と資産計上額を押さえ、通達どおりに評価。次に退職金の算定根拠(同業類似・功績倍率)を社内で固め、株主総会決議・源泉処理まで段取りを明文化。最後に、解約・満期・死亡の各シナリオで贈与・相続の扱いと“7年ルール”の時系列をすり合わせましょう。
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まとめ:重要ポイント

  • 1
    低解約返戻金型の名義変更は“70%ルール”で評価が資産計上額に引き上がる場面がある(国税庁PDFで確認)。
  • 2
    契約者変更それ自体は贈与税対象外だが、変更後の解約返戻金は贈与税判定に直結(質疑応答事例)。
  • 3
    退職金の適正額は同業類似・功績倍率と社内規程・決議の根拠づけで“過大認定”を回避する。
  • 4
    出口(一括・現物・分割)で税区分が変わる。長期分割は雑所得扱いに注意し、退職所得と比較。
  • 5
    相続・贈与“7年ルール”移行期の時系列チェックは必須。誰がいつ保険料を負担したかを証跡化する。

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