【2025年10月更新】生命保険 受取人 認知症の請求|代理と後見の使い分け
更新:

執筆者河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)

生命保険 受取人 認知症
指定代理請求
成年後見制度
死亡保険金 請求
保険金 時効3年
生命保険契約照会制度
目次
受取人が認知症だと何が止まるのか
家族が亡くなり、生命保険の 受取人固有財産 である死亡保険金を請求したいのに、受取人(多くは配偶者)が認知症で手続きが進まない——この相談が確実に増えています。法的には家族が“善意で”代わりに請求することはできず、適切な代理の仕組みが必要です。実務で使えるのが、事前準備型の 指定代理請求 と、事後対応の 成年後見制度。本稿は両者の違いと使い分け、現場の段取りと「時効3年」への備えを、最新データ・一次情報リンクつきで整理します。
まず押さえる前提(ここが壁)
- 1死亡保険金は受取人の固有財産であり、相続財産とは別枠で扱われるのが原則(判例の枠組みも確認できる)。
- 2家族が“代理で”死亡保険金を請求することは原則できず、法的根拠のある代理が必要となる。
- 3受取人が認知症で請求できないと、保険金は事実上“塩漬け化”し、家計の当座資金に影響が出る。
- 4保険金請求権には原則3年の時効があり、遅延・未請求のリスク管理が求められる。
- 5最善策は事前備え(受取人の見直し、特約の付加、任意後見や信託等の併用)で凍結を防ぐこと。
指定代理請求の基本(対象・範囲・最新事情)
指定代理請求は、被保険者や受取人が病気やケガなどで請求できない「特別な事情」が生じたとき、あらかじめ指定した親族等が“請求手続きだけ”を代行できる仕組みです。対象は主に入院・手術等の生前給付で、死亡保険金の請求は原則対象外という運用が一般的です。仕組みや条件は約款により会社差があるため、具体可否は契約先に要確認です。制度の定義は各社FAQの「指定代理請求特約とは?」が整理されています。(指定代理請求特約とは?)
実務メモ: 指定代理で請求しても、振込先は“本来の受取人名義口座”。受取人自体が変わるわけではなく、代理は手続きに限定されます。
死亡保険金、指定代理でいけますか?
母が受取人ですが認知症です。指定代理請求の特約があります。死亡保険金も代理で請求できますか?

約款上、死亡保険金の代理請求は原則対象外が一般的です。例外的に個別判断で柔軟対応がある会社もありますが、確実性は高くありません。現実解は、成年後見人を選任して法的に代理できる状態を整えるか、保険会社の個別運用可否を至急確認してください。
指定代理請求の利点と限界(現場の所要日数も)
指定代理は家庭裁判所を経ずに請求できるため、緊急の医療費・介護費の原資確保に向きます。会社や請求内容にもよりますが、書類到着後の支払は「原則5営業日以内」等の目安を明示する大手FAQもあります。(保険金や給付金はどのくらいで支払われますか?)
一方で、死亡保険金の代理は原則不可、解約や受取人変更など契約管理は範囲外という限界があります。事前に特約付加と代理人の見直しをしておくほど効きますが、“死亡時”の詰まりは残ります。
成年後見制度の基礎と“時間・費用”の実相
成年後見は、判断能力が不十分な本人に代わって、後見人等が財産管理や必要な契約を行える公的制度。保険金請求も後見人が包括的に代理できます。申立から選任までの審理は「4か月以内が約93.8%」という最新統計が示されており(審理期間別分布)、平均像は“数か月待ち”。(成年後見関係事件の概況(令和6年))
必要書類は申立書・診断書・戸籍謄本のほか、選任後に保険請求で使う「後見登記事項証明書」(発行6か月以内の原本)が実務必須です。(登記事項証明申請について)
留意点は、専門職が就く場合の報酬(継続費用)と、家族の裁量が狭まること。逆に“銀行・保険・不動産・介護契約まで一体で任せられる”のが最大の強みです。
成年後見申立〜保険請求の段取り(実務フロー)
- 1家庭裁判所に申立(診断書・戸籍等を準備)。審理に数週間〜数か月。
- 2審判確定→法務局で後見登記。登記事項証明書を取得。
- 3後見人が保険会社に連絡し、必要書類一式(請求書・診断書・後見書類)を取り寄せる。
- 4書類提出→会社の確認後、受取人(被後見人)名義口座へ振込。以後は後見人が本人の利益のために管理。

死亡保険金だけを急ぐと、法的には後見以外に道がない場面が少なくありません。だからこそ、元気なうちの受取人見直し・特約付加・任意後見や信託の準備が家計を守る最短ルートになります。
ケース別の使い分け基準(費用・時間・範囲)
目安はシンプルです。手続きの代理だけ、特に生前給付の早期受取が目的なら指定代理。死亡保険金や契約管理、預貯金・不動産・介護契約まで“横断的に動かす”必要があるなら成年後見。死亡保険金のみのために後見を付けると費用対効果が悪いことも多く、家計全体の課題(介護・相続・口座凍結)を同時に解決する前提で判断すると失敗が減ります。
なお、死亡保険金の法的性質は“受取人固有”。一方で、受取人が「相続人」とだけ指定されている場合等の配分や、著しい不公平があるときの例外(特別受益みなし)の射程は、近時の判例解説が整理しています。(生命保険金は相続財産になるのか?(判例解説))
信託・任意後見等の併用も有効です。大きめの死亡保険金は生命保険信託にして“用途管理”する、将来に備え任意後見契約を公正証書で結ぶ、などは定番の凍結回避策です。
“時効3年”の正体と備え(延伸の実務)
保険金請求権は保険法で原則3年の短期消滅時効と定められています。起算点や更新(中断)の扱いを踏まえ、近づいたら放置しないことが肝心です。(保険法)
実務対応の例は2つ。第一に、事情を説明したうえで保険会社に“据置”や書類先出し等の柔軟運用を相談すること。第二に、内容証明郵便等で請求意思を明確にして、民法上の更新(時効の完成猶予・更新)の手当てをすること。契約の所在が不明なときは、業界の 生命保険契約照会制度 を使えば一括で有無を確認できます。(生命保険契約照会制度のご案内)
なお、同制度の平時利用料は2026年4月からWeb申請6,000円・書面7,000円へ改定予定です(災害時は無料継続)。(生命保険契約照会制度の利用料金改定)
各社のサポートはどこまで頼れる?
後見までは重いけれど、何か会社のサポートはありませんか?

あります。例えば、成年後見の専門職(司法書士等)を紹介する“後見制度サポート”や、事情に応じて社内運用で手続きを進める配慮策(便宜的後見に準じた対応)を掲げる大手も。内容は会社ごとに異なるため、まずは公式ページの“お受取り・後見サポート”案内を確認し、契約ごとに可否を問い合わせましょう。参考ページとして「保険金などのお受取りに関するサービス:成年後見制度サポート」が整理的です。
参考リンク(会社名は伏せ、内容で確認)
・成年後見の相談・専門職紹介の枠組み例:(保険金などのお受取りに関するサービス:成年後見制度サポート)
・指定代理請求の定義・範囲の再確認:(指定代理請求特約とは?)
・高齢・判断力低下時の社内配慮の案内例(PDF):(お手続きにサポートを必要とするお客さま向け案内)
2025年の見直し議論(成年後見の“使いやすさ”へ)
2025年6月、法制審が成年後見の中間試案を公表。ポイントは「必要なくなれば終了できる終わりの規定」「類型の見直しで柔軟な権限付与」「本人の同意・意思確認の重視」「後見人交代の円滑化」等です。施行までは時間がありますが、制度が“長く重い”弱点を補う方向性は明確。先のばしせず、現行制度で取れる手を進めつつ、改正後の運用に備えるのが現実的です。(「民法(成年後見関係)等の改正に関する中間試案」の取りまとめ)
まとめ:重要ポイント
- 1死亡保険金は受取人の固有財産。事前の受取人見直し・特約付加で“凍結”を避ける。
- 2生前給付の迅速受取は指定代理、横断的な財産管理は成年後見と役割分担。
- 3請求権の時効は原則3年。会社への相談・内容証明・照会制度で備える。
- 4会社の“後見サポート・配慮運用”も活用。契約ごとに可否・必要書類を確認する。
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