【2025年10月更新】個人年金保険 繰上げ受取の落とし穴:減額率と開始年齢基準
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執筆者河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)

個人年金保険
繰上げ受取
解約返戻金
減額率
開始年齢
在職老齢年金
加給年金
目次
この記事で解決すること
個人年金保険の繰上げ受取は、公的年金の制度とまったく別物です。民間では契約上の前倒しが効かないことが多く、実態は「途中解約=解約返戻金の元本割れ」になりやすいのが最大の落とし穴。公的年金側も、繰上げは月0.4%の減額が一生続くうえ、世帯・税・社保に波及します。2026年4月の在職老齢年金“月62万円”改正予定も踏まえ、損失を避ける判断軸と代替策を、一次情報リンクと具体例で整理します。
まず押さえる落とし穴(早見チェック)
- 1民間の個人年金は“自由な繰上げ”が効かず、前倒し資金は途中解約の返戻金頼みになりやすい点を確認する
- 2公的年金の繰上げは月0.4%の減額が生涯固定で、障害・遺族・加給・振替加算など周辺制度にも影響する
- 360〜64歳で賃金と年金を重ねると在職老齢年金の支給停止対象になりうるため、働き方と開始時期をセットで決める
- 4夫婦世帯は加給年金・振替加算の扱いが変わるため、片方だけの最適化は避け世帯設計で評価する
- 5“お宝保険”など高予定利率契約は途中解約が致命傷になりやすく、代替手段を先に検討する
民間の個人年金“繰上げ”の正体
個人年金保険は、契約時に選んだ受取開始年齢(多くは55・60・65・70・75歳の選択肢)から受け取る仕組みです。途中で開始を早める“繰上げ受取”に対応しない商品が多数で、資金を前倒しで欲しい場合は「契約変更不可→途中解約→解約返戻金受取」となるケースが一般的です。公益財団の解説でも、解約返戻金は経過年数によっては払込保険料総額を下回り、長寿年金等の生存保障重視型では返戻金が「払込保険料相当額の7割など」を上限とするタイプもあるとされています(詳細は(個人年金保険|主契約の種類))。
契約の開始年齢は動かせますか?
60歳開始で加入しましたが、59歳から受け取りたい事情が出てきました。繰上げできますか?

商品ごとに約款が異なりますが、前倒し変更は不可が多数です。資金需要が急ぐなら“途中解約”になり、返戻率が低い時期だと元本割れが大きくなります。まずは証券で「開始年齢変更の可否」「据置・分割・契約者貸付の有無」を確認しましょう。
公的年金の繰上げ:月0.4%減が一生続く
公的年金の繰上げは、60〜64歳の間で開始を前倒しすると、月0.4%ずつ減額され、その減額率は一生変わりません(最大▲24%)。制度の一次解説は厚労省の(年金制度の仕組みと考え方 第11)で確認できます。例えば年額80万円の人が60歳開始に繰上げると、24%減で年額約60.8万円に固定。短期の資金繰りには効いても、長寿ほど総受給額の差が広がる“長生きリスク”があります。
損益分岐の目安と世帯影響の具体例
損益分岐は個々の年金額・寿命・税・社保の前提で動きますが、月0.4%減の現行制度下では“80代前半”が一つの目安。加えて、繰上げは周辺制度に波及します。厚労省資料には、繰上げ後は「障害年金(事後重症)・寡婦年金が受け取れない」「老齢厚生年金の加給年金や振替加算に影響が出る」「任意加入や追納ができない」などの留意点が並びます(同(年金制度の仕組みと考え方 第11))。夫が厚生年金10万円・賃金45万円で働く場合、妻の開始年齢や加給・振替加算の条件次第で世帯手取りが数万円単位で変わるため、片方だけで繰上げ判断をしないのが実務の鉄則です。

“いま欲しい現金”と“老後の毎月”を同じ画面で見える化することが、繰上げ判断の第一歩です。短期の安心と長期の安心を天秤にかけましょう。
2026年4月の在職老齢年金“月62万円”改正予定
働きながら年金を受け取る人の支給停止基準は、2026年4月から「月62万円」に引き上げ予定(現行は月50万円[2024年度価格])。厚労省の公式説明では、賃金45万円+年金10万円=55万円の人は、改正後は支給停止がなくなります(例示あり)。“62万円”は令和6年度の賃金水準で示された目安で、施行時点の金額は賃金動向に応じて調整されます。一次情報は(在職老齢年金制度の見直しについて)を参照してください。
世帯・税・社保の波及チェック
- 165歳前に繰上げすると、障害年金(事後重症)・寡婦年金の権利を失うため、健康リスクが高い人は慎重にする
- 2加給年金や振替加算は、繰上げ・繰下げの選択で停止・不加算が生じるため、夫婦で開始年齢を分けて最適化する
- 3年金収入の発生で扶養を外れると国保・介護保険料が増えることがあるため、税・社保の年額まで試算する
- 460〜64歳の就労者は賃金+年金の合算が新基準にかからないよう、賃金・賞与・開始月を柔軟に設計する
- 5民間年金を途中解約する前に、据置・分割受取・契約者貸付など“前倒し以外の手”を先に検討する
民間年金の途中解約リスクと代替策
民間の個人年金は、公的年金のような一律“減額率”ではなく、運用期間を短縮するほど返戻率が下がる構造です。公的・中立機関の解説でも「解約返戻金は経過年数により払込保険料総額を下回る」「生存保障重視型では返戻金の上限が払込保険料の7割など」と明記されています((個人年金保険|主契約の種類))。資金繰りは、年金の据置(開始を延期して増額)や分割受取への切替、契約者貸付の活用で“解約せず前倒し”を探るのが実務のセオリーです。
“お宝保険”はどう扱う?
90年代に入った高利率の個人年金があります。資金が必要で、解約して繰上げたいのですが…

高予定利率契約は、返戻率・年金額の総合利回りが現在より有利なことが多く、途中解約の機会損失が大きくなりがちです。まずは貸付や他資産の取り崩しを優先し、解約は“最後の手段”に。契約の利率・返戻曲線・税の扱いまで並べて評価しましょう。
前倒しが妥当になるのは、どんな時?(判断フロー)
前倒しの適性は“短期の現金需要”と“他資金の有無”で決まります。家賃・医療費などの緊急支出が確実で、他に安全に取り崩せる資金がない場合は繰上げ適性が相対的に高まります。一方、健康状態に不安がなく働ける見込みがある、周辺制度(加給・振替加算・在職老齢)で損が生じやすい人は、繰下げ・据置・併用で損失を抑えるのが堅実です。

公的は繰下げ、民間は据置や分割で補う“併用”は、減額の固定化を避けつつ毎月の不足を埋める現実解になりやすいです。
行動手順と相談活用(実務の段取り)
証券と約款で「開始年齢の変更可否」「据置・分割・貸付の有無」「返戻率の曲線」を確認し、年金・税・社保を同じシートで試算します。一次情報リンクで制度の境目を押さえたうえで、オンラインでFPに家計・年金・保険を横断相談すると意思決定が速くなります。弊社の無料オンラインFP相談は24時間365日対応。LINEで予約が完結し、強い勧誘は「イエローカード」で遮断できます。キャンペーンも実施中で、参加者には「giftee Cafe Box」など選べるギフトをご用意(詳細はLINEから)。
まとめ:重要ポイント
- 1民間の個人年金“繰上げ”は途中解約が中心で、返戻率の元本割れが典型。まず据置・分割・貸付を検討する
- 2公的年金の繰上げは月0.4%減が一生続く。周辺制度(障害・寡婦・加給・振替加算・任意加入)への影響を必ず確認する
- 32026年4月の在職老齢年金“月62万円”改正予定で、働きながら受け取る設計の選択肢が広がる。一次情報を確認する
- 4夫婦世帯は加給・振替加算の可否が変わるため、片方だけの最適化は避け“世帯設計”で手取り最大化を図る
- 5判断に迷うときは、公的の繰下げ×民間の据置・分割の併用で“毎月不足”を埋めつつ減額固定化を避ける
ぜひ無料オンライン相談を
繰上げの損得は、契約約款・返戻率の曲線・税・社会保険の組み合わせで変わります。FP相談なら証券の確認から制度リンクの提示、家計シートの試算までオンラインで一気通貫。時間と場所の制約がなく無料で何度でも相談でき、中立の立場で商品比較と制度活用の優先順位を整理します。次の一歩は、LINEで相談予約→証券写真の共有→30分の初回棚卸しです。
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