【2025年10月更新】生命保険料控除と定額減税の併用|年末調整の提出順と配分基準
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執筆者河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)

生命保険料控除
定額減税
年末調整
住宅ローン控除
扶養控除
基礎控除
不足額給付
目次
今年の要点総整理:併用の全体像と“損しない”考え方
2024年分(令和6年)に一度だけ実施された 定額減税 は、年末調整で住宅ローン控除などの税額控除を差し引いた後に適用され、使い切れない分は「不足額給付(調整給付)」で補われます。2025年の年末調整(令和7年分)では、生命保険料控除を含む所得控除の申告を漏れなく行うことが重要で、あわせて「基礎控除58万円への引上げ」「給与所得控除の最低保障65万円」「特定親族特別控除の新設(19〜23歳)」という新ルールの影響を踏まえて、家計単位で提出順と配分を見直すのが正解です。制度の一次情報は国税庁の特設ページで確認できます。(定額減税 特設サイト)
「損しない」ための基本は2点です。生命保険料控除は所得税だけでなく住民税にも効くので、税額がゼロ見込みでも申告を省かないこと。そして、扶養や配偶者の所得基準の“48万円→58万円”への改正を前提に、誰が何を申告するかを家族で整理し、社内締切前に証明書類(電子交付含む)を揃えておきましょう。詳しい控除の枠は国税庁の解説がわかりやすいです。(No.1140 生命保険料控除)
2025年に押さえる制度更新ポイント
- 1基礎控除の見直しで「合計所得×段階」に応じて58万円(特例加算あり)へ引上げられます。(令和7年度税制改正Q&A)
- 2給与所得控除の最低保障が55万円→65万円に引上げ。年末調整では新しい「給与所得控除後の給与等の金額」表を用います。(令和7年度税制改正Q&A)
- 319〜23歳の「特定親族特別控除」が創設。合計所得58万円超〜123万円以下の若年扶養に対し最大63万円の控除が新設されます。(令和7年度税制改正Q&A)
- 4扶養親族・同一生計配偶者・勤労学生の所得要件が48万円→58万円に改正。扶養に入れる範囲が広がります。(令和7年度税制改正Q&A)
- 52026年分(令和8年)限定で、23歳未満扶養がいる世帯の「一般生命保険料控除(新契約)」上限が一時的に6万円へ拡充(合計上限12万円は据え置き)。大綱にも明記されています。(令和7年度税制改正の大綱(1/9))
制度の仕組みを短時間で理解:性質と適用順序
年末調整の計算順序は「所得控除→課税所得→税率→税額控除→復興特別所得税」の流れです。生命保険料控除=所得控除なので税額計算前に効き、定額減税=税額控除は税額計算後に充当されます。税額控除の優先は「住宅ローン控除→定額減税」の順。つまり、住宅ローン控除で税額が小さくなった後に定額減税が差し引かれ、なお使い切れない分は後述の不足額給付で補われます。根拠や事務の全体像は国税庁の特設サイトのパンフレットにまとまっています。(定額減税 特設サイト)
「定額減税で税額ゼロ。生命保険料控除は申告しなくてもいい?」
今年は住宅ローン控除と定額減税で所得税がゼロになりそうです。保険の控除証明を出さなくても同じですか?

出さないのは損です。生命保険料控除は住民税にも効きますし、翌年以降の各種判定にも影響します。所得税がゼロでも、住民税の控除枠(合計7万円)で負担軽減が期待できるので、年末調整で必ず申告しましょう。(No.1140 生命保険料控除)
控除外額と調整給付の仕組み:1万円単位は“切り上げ”
2024年分の定額減税は、月次・年末調整で税額から差し引き、使い切れなかった「控除不足額」は自治体が把握して「不足額給付(調整給付)」として支給します。算定は、所得税・住民税それぞれの控除不足額を足し合わせ、1万円単位で「切り上げ」た額から当初の調整給付分を差し引いた差額を支給する仕組みです(1万円未満は支給されません)。時期や手続の案内は自治体から届きます。(よくあるご質問)

提出順は「人数確定→証明書添付→控除申告」。この順番を守るだけで、8割のミスは防げます。
年末調整の提出順と必要書類:ミスゼロ段取り
まず、扶養控除等申告書・基礎控除申告書で配偶者・扶養親族の人数と所得見積を整えます(2025年は所得要件58万円へ改正)。次に「保険料控除申告書」に、生命保険料・地震保険料・小規模共済等の控除証明書(電子交付の印刷も可)を添付。若年扶養(19〜23歳)に該当する場合は、新設の「特定親族特別控除申告書」も準備して、合計所得額に応じた控除額を記載します。各様式の改正点や記載例は国税庁Q&Aが詳しいです。(令和7年度税制改正Q&A)
社内締切・差し戻しを防ぐチェックリスト
- 1扶養の所得見積は“58万円基準”に更新されているかを確認する
- 216歳未満も定額減税の対象人数に含めていたか(2024年分の確認)
- 3保険の控除証明書は最新年度・電子交付のQR出力を含めて揃っている
- 4特定親族(19〜23歳)は新様式で控除額を記載したか
- 5二か所給与・途中退職がある人は会社任せにせず確定申告の要否を社内共有
配分基準の実務フレーム:共働きの控除配分
共働きは「扶養の人数」「住宅ローン控除の有無」「課税所得の差」を軸に、どちらが申告すると家計全体の税額が最小になるかで配分します。たとえば夫側に住宅ローン控除があり税額が小さいなら、妻側に生命保険料控除や配偶者控除・特定親族特別控除を寄せることで、住民税を含めた負担軽減幅が大きくなるケースがあります。社内締切までに世帯で申告の役割分担を“決めてから”書類に記入するのがコツです。
住宅ローン控除併用時に“税額を残す”設計とは?
住宅ローン控除で年税額がほぼ相殺されます。定額減税や給付も考えると、どの控除をどちらが申告すると有利ですか?

順序は「住宅ローン控除→定額減税」です。税額をあえて残すために控除申告を減らす必要はありません。生命保険料控除は住民税にも効きますし、定額減税の控除不足分は不足額給付で補われます。まずは扶養人数を正確に申告し、保険などの所得控除は“全部申告”が原則です。(定額減税 特設サイト)
所得税ゼロでも住民税を減らす申告のコツ
所得税がゼロ見込みでも、生命保険料控除は住民税側で最大7万円まで効きます(新契約の各区分上限は2.8万円、合計7万円)。年末調整で控除証明書を添付して「保険料控除申告書」に記載し、住民税も軽くするのが家計防衛の基本です。控除の細かな計算や新旧契約の扱いは国税庁の説明が参考になります。(No.1140 生命保険料控除)
ケーススタディ①:住宅ローン控除で税額ほぼゼロの家庭
モデル:給与収入600万円、住宅ローン控除12万円、配偶者あり(合計所得40万円)、新契約の生命保険料8万円。
計算の流れ(概算)
- 課税所得計算:基礎控除は2025年改正後の枠を適用(58万円+必要に応じた加算)。給与所得控除の最低保障は65万円。生命保険料控除(一般枠)は4万円(所得税)。
- 税額控除:住宅ローン控除12万円→残税額が小さくなり、定額減税(2024年分)は年末調整で控除。残れば不足額給付の対象。
- ポイント:生命保険料控除は住民税にも効くため、所得税がゼロでも住民税負担の軽減につながる。
ケーススタディ②:扶養2人・控除外額2万円の家庭
モデル:本人+配偶者+子1人(16歳未満)。定額減税(所得税)は本人3万円+配偶者3万円+子3万円で合計9万円。年税額が7万円なら、2万円分が控除不足です。
不足額給付の算定は「所得税・住民税の控除不足額の合計を1万円単位で切り上げ」ます。年末調整後に自治体が把握し、当初給付との差額が支給されます(1万円未満は対象外)。詳細のロジックは内閣官房FAQで確認できます。(よくあるご質問)
ケーススタディ③:二か所給与・副業ありの確定申告パターン
途中退職や二か所給与があると、会社の年末調整だけでは年税額と減税枠の整合が取れないことがあります。確定申告で合算・再計算することで、定額減税の控除不足額や住宅ローン控除との整合が正しく反映されます。必要書類(源泉徴収票、保険の控除証明書、扶養の確認書類)を揃え、年末調整の記載と重複なく申告しましょう。全体像は国税庁の特設サイトからパンフレットを確認できます。(定額減税 特設サイト)
よくある落とし穴と回避策
「定額減税があるから控除は不要」は誤解です。生命保険料控除は住民税にも効くため、控除証明書の未提出は家計の取りこぼしになります。また、2025年から扶養・配偶者の所得要件は58万円へ改正。前年の“48万円”のまま判断すると申告漏れが生じます。電子交付データの未連携や添付漏れも差し戻しの典型。マイナポータル経由で控除証明を取得して、社内締切より前に一度セルフチェックを。改正の様式・記載はQ&Aの該当箇所を参照してください。(令和7年度税制改正Q&A)
2025→2026制度変更早見:準備しておくこと
2025年分では基礎控除・給与所得控除・若年扶養向けの特定親族特別控除が適用されます。2026年分(令和8年)では、23歳未満扶養がいる世帯を対象に新契約の一般生命保険料控除の上限が一時的に6万円に拡充(合計上限12万円は据え置き)。住宅ローン控除・各種控除との重なり方をあらかじめ試算し、証明書類の電子保存と原本の5年保管にも対応しておきましょう。制度の位置づけは財務省の大綱で確認できます。(令和7年度税制改正の大綱(1/9))
今日からできる3アクション
- 1扶養・配偶者の所得見積を“58万円ルール”に更新して、対象人数を再確認する
- 2生命保険の控除証明書(電子交付含む)をマイナポータルで取得し、提出書類を先に揃える
- 3若年扶養がいる家庭は「特定親族特別控除申告書」を作成し、年末調整前に社内チェックを受ける
まとめ:重要ポイント
- 1生命保険料控除は所得税ゼロでも住民税に効くため、年末調整で必ず申告する
- 2税額控除の順序は住宅ローン控除→定額減税。使い切れない分は不足額給付で補われる
- 32025年は基礎控除・給与所得控除の引上げ、特定親族特別控除の新設に対応が必要
- 4扶養・配偶者の所得要件は58万円へ改正。人数の申告漏れに注意
- 52026年分は子育て世帯の一般生命保険料控除上限が6万円へ一時拡充予定
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