【2025年9月更新】収入保障保険の税金|年金と一括の手取り比較|契約形態別税区分早見表
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執筆者河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)

収入保障保険の税金
年金受取 手取り
一括受取 税金 計算
相続税 非課税枠 500万円
年金受給権 二重課税
収入保障保険 一時所得
目次
はじめに:迷いやすい“税区分”を地図化する
ご家族に万一があったとき、収入保障保険の受取を「年金」か「一括」かで手取りは大きく変わります。しかも契約者・被保険者・受取人の組み合わせ次第で、相続税/所得税/贈与税のどれに当たるかが変わるため、判断が難しいのが実情です。本稿では収入保障保険の税金を2025年9月時点の一次情報で整理し、契約形態別の税区分、年金と一括の手取り差、相続税の非課税枠や“二重課税”回避の仕組みまで、実務で迷わない順番で解説します。リンク先はいずれも国税庁のタックスアンサー等の一次資料です。
いますぐ要点:税区分と手取りの全体像
- 1契約者=被保険者、受取人=法定相続人なら原則“相続税”ルート。生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人)を活用できる((相続税の課税対象になる死亡保険金))。
- 2契約者=受取人(保険料負担者自身が受取)なら“所得税”ルート。一括は一時所得、年金は雑所得。年金支払時は原則、所得税(復興特別所得税含む)10.21%が源泉、住民税は翌年度課税((保険契約者である本人が支払を受ける個人年金))。
- 3契約者≠被保険者≠受取人なら“贈与税”ルート。死亡時点で年金受給権の評価額に贈与税、以後の年金は雑所得(課税済み部分は非課税按分)((死亡保険金を受け取ったとき)、(相続等により取得した年金受給権…))。
- 4年金形式では“死亡時に年金受給権”へ相続税または贈与税、以後の年金は課税部分のみ雑所得。初年度は全額非課税、2年目以降は課税部分が階段状に増える((相続等により取得した年金受給権…))。
- 5相続前贈与の“7年ルール”は経過措置中。令和6年贈与から持ち戻し延長が段階適用((贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)))。
収入保障保険の受取方法と税の仕組み(地図)
死亡時に受け取る手段は、毎月の給付(年金)か一括受取の2通りが基本です。税金は「誰が保険料を払っていたか」「誰が受け取るか」で決まり、死亡保険金や年金受給権が相続・贈与・所得のどれに当たるかを判定します。実務では国税庁の区分表に沿って、まず課税ルートを確定するのが近道です((死亡保険金を受け取ったとき))。年金形式を選ぶと、死亡時には将来の年金を受け取る権利(年金受給権)の評価額で相続税または贈与税が判定され、支給開始後は毎年の所得税(雑所得)で“利息相当”部分だけが課税されます((相続税等の課税対象になる年金受給権)、(相続等により取得した年金受給権…))。
年金受給権の評価:『何割』ではなく“現在価値”で見る
年金形式を選ぶと、死亡時に“年金受給権”の評価額で相続税または贈与税を判定します。評価は商品の設計や金利前提で変わり、一般化した固定比率(例:総額の○割)では説明できません。実務は、保険会社の設計書に記載の“一括受取相当額(現在価値)”や評価通知を基に判定します((相続税等の課税対象になる年金受給権))。相続税では、この評価額から相続税の非課税枠(生命保険金は500万円×法定相続人)を差し引いて判定します((相続税の課税対象になる死亡保険金))。以後の年金は、相続・贈与で“既に課税済みの元本部分”を非課税とし、残り(運用益に相当)だけを雑所得として按分課税します((相続等により取得した年金受給権…))。
契約者=受取人時の一時所得・雑所得と源泉の正解
保険料負担者=受取人のケースは“所得税ルート”。一括受取なら一時所得(保険金-払込保険料-特別控除50万円の1/2が課税所得に算入)、年金受取は雑所得(年金額から対応する保険料相当額を差し引いた残り)です。年金が支払われる際は、(年金額-対応保険料)×10.21%の所得税(復興特別所得税含む)が原則源泉徴収されます。年額ベースで(年金額-対応保険料)が25万円未満なら源泉なし。住民税は源泉されず、翌年度に課税されます((保険契約者である本人が支払を受ける個人年金))。なお、契約形態によっては“年金支払時に源泉されない”ものもあります((死亡保険金を受け取ったとき)の注記参照)。
初年度非課税や源泉徴収はどうなる?
年金形式だと『初年度は非課税で、2年目以降にだんだん課税』と聞きました。本当ですか?源泉徴収もされますか?

はい。相続や贈与で取得した“年金受給権”に基づく年金は、年金の収入を非課税部分と課税部分に振り分けて計算します。初年度は全額が非課税、2年目以降は課税部分が階段状に増えていく仕組みです((相続等により取得した年金受給権…))。源泉徴収は契約形態で異なります。保険料負担者=受取人なら、(年金額-対応保険料)×10.21%が原則源泉、25万円未満なら源泉なし((No.1610))。一方、保険契約者と受取人が異なる“一定の契約”等では源泉されない取扱いもあります((No.1750)の注記)。
年金形式:課税と手取りの試算(20万円×20年モデル)
モデル前提を置いて、手取りの“考え方”を確認します。例:月20万円×20年(総額4,800万円)を年金形式で受取。保険会社の設計書に「一括受取相当額(現在価値)=3,800万円」と記載があると仮定します。この3,800万円が死亡時点の年金受給権の評価額になり、契約関係に応じて相続税または贈与税の判定に用います((相続税等の課税対象になる年金受給権))。相続税ルートで法定相続人が配偶者と子1人なら、生命保険金の非課税枠は1,000万円。評価額3,800万円から非課税枠1,000万円を控除し、他の遺産と合算して基礎控除へ。以後の年金は“課税部分のみ”が雑所得です。相続税評価割合=3,800万円÷4,800万円≒79.2%とすると、国税庁の振り分け表では課税割合20%の帯に該当し、年金収入のうち課税対象は按分で徐々に増えます(初年度は全額非課税)((相続等により取得した年金受給権…))。毎年の確定申告では、課税部分の年金額から対応する保険料相当額を差し引いて雑所得を計算します。ここまでの流れで、相続(贈与)と所得課税が重複しない“二重課税回避”が制度化されている点が重要です。
一括受取:相続税・一時所得・贈与税の計算イメージ
一括受取を選ぶ場合、課税ルートは契約関係で決まります((死亡保険金を受け取ったとき))。相続税ルート(契約者=被保険者、受取人=法定相続人)なら、受取額から“生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人)”を控除して判定((相続税の課税対象になる死亡保険金))。契約者=受取人なら“一括は一時所得”。例:保険金1,000万円、払込保険料300万円なら、一時所得=1,000-300-50=650万円、課税対象はその1/2=325万円。他の所得と合算して税率を適用し、住民税は翌年度課税。贈与税ルート(契約者≠被保険者≠受取人)では、受取額から年間110万円の基礎控除を引いた残りに累進税率がかかります。高率になりやすいため、このパターンを避ける設計(受取人を法定相続人にする等)が有効です。
贈与税化の回避と“7年ルール”の影響
“契約者≠被保険者≠受取人”は死亡時に贈与税ルートとなり負担が重くなりがちです。設計段階で受取人を法定相続人にして相続税ルートに乗せると、非課税枠の活用が可能になります((死亡保険金を受け取ったとき))。また、生前贈与の“持ち戻し”は令和6年贈与から段階的に“7年”へ延長されています。死亡日が令和9年~12年の期間は「令和6年1月1日から死亡日までの贈与」を加算、令和13年以降は「死亡前7年以内の贈与」を加算。相続税計算では加算分に対応する贈与税額が控除されます((贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)))。設計の段階から“贈与税ルート回避”と“持ち戻しの読み”をセットで検討しましょう。

受取方法や受取人を決める前に、まず課税ルート(相続税/所得税/贈与税)を確定させると手取りのブレが一気に小さくなります。現金需要と相続税の非課税枠の両立が鍵です。
どっちが有利?家計別の使い分け指針
- 1配偶者受取・子あり世帯は“相続税ルート×年金”が本命。死亡時は相続税が出にくく、年金の課税は利息相当のみで手取り率が高くなりやすい。
- 2葬儀費やローン完済など一時の資金需要が大きい家庭は“一部一括+残り年金”のハイブリッドに。年金受給権の評価は現在価値で判定されるため、設計書の一括相当額を確認して最適配分を決める。
- 3契約者=受取人(所得税ルート)は“一括だと一時所得の50万円控除・1/2課税”の利点も。年金は毎年の雑所得で源泉10.21%(住民税は翌年度)を見越して資金繰りを設計。
- 4“契約者≠被保険者≠受取人”の贈与税ルートは可能な限り避ける。やむを得ない場合は暦年110万円控除の活用や持ち戻し期間の把握を徹底。
2025年トレンドと実務アラート
制度改正の“波”を踏まえた実務ポイントです。生前贈与の持ち戻しは令和6年贈与分から段階的に7年へ延長済み((贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)))。生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人)については拡充の議論が続いていますが、2025年9月時点で法改正は実現していません。申告・納付は、所得税は国税庁の「確定申告書等作成コーナー」からe-Taxで作成・提出が可能((保険契約者である本人が支払を受ける個人年金)内リンク参照)。相続税は「相続税の申告要否判定コーナー」で申告の要否を試せます((相続税の課税対象になる死亡保険金)内リンク参照)。
高度障害給付・特約の課税の見方(注意点)
高度障害等で支払われる給付・特約の税務は、支払事由と契約形態により扱いが分かれます。死亡保険金と異なり“生前給付”扱いのもの(例:リビング・ニーズ特約)には所得税非課税の取扱いがある一方、契約者=受取人の年金給付は雑所得課税が基本です。各社の支払通知書に記載される“区分”と契約形態、国税庁タックスアンサーの該当項目を突き合わせて個別確認してください(関連の基礎は(死亡保険金を受け取ったとき)に整理されています)。
申告・手続きの実務(e-Tax・必要書類)
年金受取の雑所得申告では、保険会社の年金支払明細・支払通知書、源泉徴収票(発行がある場合)、契約の払込保険料の総額や対応額が分かる資料を用意。年金受給権を相続・贈与で取得した場合は、相続税や贈与税の申告控え・評価通知の写しがあると按分計算の根拠になります。相続税ルートでは、受取人・法定相続人の関係が分かる戸籍類、保険金の支払通知書、非課税枠の配分計算を添付。所得税の確定申告は「確定申告書等作成コーナー」で作成・e-Tax送信が便利です((保険契約者である本人が支払を受ける個人年金))。
まとめ:重要ポイント
- 1課税ルート(相続税/所得税/贈与税)は“契約者・被保険者・受取人”の組み合わせで決まる。まずここを確定する。
- 2年金形式は死亡時に“年金受給権(現在価値)”で判定し、以後の年金は課税部分のみ雑所得。初年度非課税・按分で二重課税を回避する。
- 3相続税ルートは『500万円×法定相続人』の非課税枠が強力。贈与税ルートは高負担になりやすく、設計段階で回避を検討する。
- 4契約者=受取人は“一括=一時所得、年金=雑所得”。年金は原則10.21%の源泉(住民税は翌年度)を見越して資金計画を。
- 5生前贈与“7年ルール”は経過措置中。設計・受取・申告の全段階で一次情報を確認し、迷ったら専門家に相談する。
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