【2025年9月更新】がん保険の給付金の税金|医療費控除の差し引き基準早見表
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執筆者河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)

がん保険 給付金 税金
医療費控除 差し引き 基準
診断給付金 非課税 2025
高額療養費 2025 変更
一時所得 50万円控除
e-Tax 医療費通知
目次
はじめに:迷いやすい“非課税”と“差し引き”の境界
がん保険の給付金は「税金はかからない」と聞く一方、確定申告では「医療費控除で差し引く」とも言われます。ここに大きな誤解の余地があります。税法上は、がんの入院・手術・通院・診断給付金は広く「疾病・傷害に基因して受ける給付」として、原則、所得税・住民税はかかりません。一方で、医療費控除では「その医療費を補てんする給付」は対応する分だけ差し引く必要があります。この記事は2025年9月時点の一次情報を踏まえ、非課税の範囲と差し引きの正しい線引きを、実務の手順まで含めて整理します。なお、2025年8月から予定されていた高額療養費の自己負担上限の引上げは、3月に政府が「見直し全体の実施見合わせ」を表明し、秋までに方針再検討とされました。従って本稿では現行の上限額ルールを前提に解説します(厚労省の説明資料に首相発言の抜粋あり)。ここを押さえれば、年またぎや家族合算でも、還付ロスなく申告できます。最終章では無料のオンラインFP相談の使い方もご案内します。
還付ロスを防ぐ初動チェック
- 1医療費控除は支払日ベースで集計し、同時に給付金の「支払事由」と対応づけをメモしておく。
- 2診断給付金など“医療費にひもづかない一時金”は原則、控除計算に差し引かない前提で仕訳する。
- 3入院・手術・先進医療の給付は、該当する医療費の範囲内でのみ控除から差し引く。超えた分は他費目からは引かない。
- 4給付金が未入金でも、申告時に受取額が確定していれば当年の医療費から控除相殺する(未確定は見込額で申告し後日調整)。
- 5e-Taxでは医療費通知データを取り込み、補填欄に「対応する保険金等のみ」を入力する。
基礎整理:がん保険の給付金と課税区分の全体像
まずは税目の大枠です。がん保険の給付金は原則非課税。入院・手術・通院・先進医療・診断給付金など、生存中の疾病・傷害に基づく給付は所得税・住民税の課税対象外です(平易な整理は(入院給付金などには税金がかからない?))。一方、死亡保険金は契約関係で課税が変わります。被保険者=保険料負担者で受取人が相続人なら相続税(非課税枠は500万円×法定相続人)、契約者=受取人で被保険者が別人なら所得税(一時所得/雑所得)、契約者・被保険者・受取人がすべて異なるなら贈与税です((No.1750 死亡保険金を受け取ったとき))。また、解約返戻金や満期保険金は「利益部分」が一時所得(50万円の特別控除+1/2課税)や雑所得になります((No.1755 満期保険金等を受け取ったとき))。
診断給付金は医療費控除で差し引くの?
がん診断給付金を100万円受け取り、入院と手術で自己負担が80万円でした。医療費控除では100万円を全部差し引くのですか?

いいえ。控除計算で差し引くのは「医療費を補てんする」給付に限られます。診断給付金のように特定の医療費にひもづかない一時金は、一般に差し引き不要です。入院・手術給付は該当医療費の範囲で差し引きます。国税庁の解説でも、補てん分は“その医療費ごと”に差し引き、引き切れない金額は他の医療費から差し引かないと明記されています((医療費を支払ったとき)、(支払った医療費を超える補填金))。
早見:契約形態で決まる“死亡時”の税区分
死亡保険金の税区分は3パターンです。1) 被保険者=保険料負担者、受取人=相続人→相続税(死亡保険金の非課税枠あり)。2) 保険料負担者=受取人、被保険者=別人→所得税(受取方法で一時所得/雑所得)。3) 契約者・被保険者・受取人がすべて異なる→贈与税。年金形式で受け取る場合も、受取権の相続税/贈与税の判定と、各年の雑所得課税が併存します(根拠と詳細は(No.1750)を参照)。がん保険の主眼は生存給付であり、多くの方は「契約者=被保険者=受取人」で非課税の給付を受けるケースが中心です。

医療費控除は“合計の引き算”ではなく“1件ごとのひも付け”。ここを間違えなければ、診断給付金で控除を減らすミスは防げます。
医療費控除の差し引き基準:対応関係がすべて
医療費控除の対象は、その年に実際に支払った医療費のうち、保険金や公的給付で補てんされなかった自己負担分です。国税庁は、補てんの差引は「その給付の目的となった医療費の金額を限度」に行い、「引き切れない金額があっても他の医療費から差し引かない」と明記しています((医療費を支払ったとき))。このルールに従うと、入院給付金・手術給付金・先進医療給付金・高額療養費など“医療費の補てん”は該当医療費から差し引き、超過分は捨てます。一方、診断給付金のように“広い目的の一時金”は特定の医療費に対応しないのが通常で、控除計算で差し引きません。通院給付金は契約の支払事由によりますが、医療費(診療費や交通費等)を補てんする性格が明確なときは差し引き、そうでない定額の見舞金に近い性格なら差し引かない、という整理が実務的です。迷う場合は、支払通知書の「給付事由」と実際の領収書を付き合わせて判断し、メモを残しましょう。
ケーススタディ:よくある3パターン
- 1診断給付金100万円+入院給付金50万円、医療費100万円(入院・手術80万円+その他20万円)→控除対象医療費=80万円−50万円+20万円=50万円。診断給付金は差し引かない。
- 2入院費30万円に入院給付金35万円→入院費は全額補てんで0円。余った5万円は他の医療費から差し引かない((支払った医療費を超える補填金))。
- 3先進医療の技術料200万円、先進医療給付金200万円→当該費用は控除0円。もし給付が190万円なら、差引後10万円が控除対象。
年またぎ・過不足・e-Tax:実務の詰まりどころ
申告時に給付金が未入金でも「受け取る金額が確定」していれば、その見込額を当年の医療費から差し引きます。後日実績が違ったら、受領額が多い場合は修正申告、少ない場合は更正の請求で訂正します((医療費を支払ったとき))。e-Taxでは「医療費通知」や審査支払機関の「医療費通知情報(XML)」を取り込み、明細の入力を簡略化できます((No.1119 医療費控除に関する手続))。ただし、通知に載らない自由診療やタイミングの合わない分は、病院別・人別にまとめて手入力し、補填欄には“対応する給付のみ”を入れます。
補填欄はどう書く?見込額は使っていい?
医療費控除の明細書で、保険金の補填欄は合計額を書けばいいですか?あと、給付金は未入金ですが支払決定の通知は届いています。

補填欄は行ごとに“その医療費に対応する金額だけ”を記入します。合計で一括記入は不可です。未入金でも支払額が確定していれば、その金額で差し引きます。未確定なら見込額で申告し、後日差が出たら修正申告または更正の請求で調整しましょう(根拠は国税庁の同ページとNo.1119の手続解説)。
2025年の制度トピック:高額療養費の見直しは“いったん見送り”
高額療養費制度は、2025年8月から自己負担上限の引上げ・所得区分の細分化等が予定されていましたが、2025年3月7日に首相が「本年8月の定率改定を含め見直し全体の実施を見合わせ、秋までに方針を再検討」と表明。厚労省の専門委員会資料にも経緯と現行の上限額が整理されています(首相発言抜粋や現行上限の図表は(高額療養費制度について(厚労省資料)))。このため、少なくとも2025年9月時点での申告・試算は現行の上限額で行うのが前提です。将来改定が決まった場合でも、医療費控除の「対応関係で差し引く」という原則は変わりません。
申告準備の段取り:今日からできること
申告の精度は“ひも付け保存”で決まります。e-Taxの医療費通知で入力簡略化が進んだとはいえ、領収書(控除対象の費用)と保険会社の支払明細(何に対する給付か)を1対1で束ねておくと、補填欄の記入や年またぎの調整がスムーズです。明細書は「医療を受けた人×医療機関」単位でまとめ記載が可能。診断給付金など差し引かない給付は補填欄に入れない点を家族で共有しましょう。誤って差し引き過剰・過少があっても、気づいた時点で修正申告・更正の請求でリカバリーできます。迷ったら、根拠ページ(国税庁No.1119・「医療費を支払ったとき」)の該当部分を確認しつつ、税務署や専門家に相談するのが近道です。
まとめ:重要ポイント
- 1がんの入院・手術・通院・先進医療・診断給付金は原則“非課税”。死亡保険金だけは契約関係で相続税・所得税・贈与税に分かれる。
- 2医療費控除は「対応する医療費の範囲で補填分を差し引き、余りは他から引かない」。診断給付金は通常、差し引き不要。
- 3未入金でも支払額が確定していれば当年で相殺。e-Taxの医療費通知と補填欄の“1件ごとのひも付け”が実務のカギ。
- 4高額療養費の上限引上げは2025年8月実施が見送り。現行上限で試算し、今後の決定を静観。
- 5解約返戻金や満期保険金は利益部分が一時所得(50万円控除+1/2課税)。死亡時の税区分は国税庁のフローチャートで確認。
ぜひ無料オンライン相談を
医療費控除の“差し引き”や契約形態による税区分は、家族構成や給付スケジュールで最適解が変わります。ほけんのAIの無料オンラインFP相談なら、領収書や給付明細の写真を共有しながら、その場で「補填の対応付け」やe-Tax入力の注意点、保険と家計の見直しまで中立に整理できます。24時間チャット予約OK。まずはLINEで気軽にご相談ください。
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