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【2025年11月更新】法人保険と中退共|退職金の使い分けと2019通達

更新:
河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
執筆者河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
【2025年11月更新】法人保険と中退共|退職金の使い分けと2019通達
法人保険
中退共
退職金
2019通達
名義変更70%評価
短期退職手当等
企業型DC

課題提起:なぜ今“中退共だけ”では不十分か

物価上昇と人材定着の競争が続く2025年、従業員の退職金は「安心」を土台にしつつ、インフレを踏まえた上積みと役員の出口まで一体設計する必要があります。公的な 中退共 は導入しやすく確実ですが、令和7年度の付加退職金支給率は0で、元本超の上積みは抑制的です。2019年の法人保険通達改正で「節税保険」の効果は縮小し、保険は保障と原資準備の道具に回帰しました。従業員は中退共を基礎に、上積みは企業型DC等、役員は法人保険×退職慰労金で「退職時に解約益と退職金を同年度で並べる」出口が現実解です。この記事では、2019通達・30万円特例・2021評価通達まで一次情報のリンクで確認し、失敗のない段取りを具体化します。

いまの前提(数字で押さえる)

  • 1
    令和7年度の付加退職金支給率は0(過去の支給率一覧に明記され、長期加入者優遇の枠組み自体は維持)
  • 2
    中退共の新規加入助成は加入後4か月目から1年間、掛金月額の1/2(上限5,000円/人)(制度の特色ページに規定)
  • 3
    2019年の法人税基本通達は7/8以後契約に適用、最高解約返戻率50/70/85の区分で資産計上と取崩しを明確化
  • 4
    中退共は掛金納付12か月未満は原則不支給、24〜42か月は掛金相当、43か月以降で利息や付加が加算
  • 5
    役員は原則中退共加入不可、退職金は社内規程に基づく慰労金の設計が必要

法人保険と中退共の仕組み比較(加入対象・拠出・税務・給付)

企業契約の 法人保険 は保障(死亡・高度障害・医療等)と解約返戻金で退職金原資を柔軟に準備できます。税務は商品・返戻率により損金/資産計上の線引きが変わります(2019通達の骨子は国税庁のQ&Aに整理されています)。一方、 中退共 は掛金を全額損金(または必要経費)算入でき、退職時は機構から従業員本人に直接支給されるため、会社の資金繰り負担と事務が軽いのが強みです。給付は一時金が基本で、分割払い(60歳以上・金額要件あり)も選択可能です。

中退共の助成と利回りの実態(公式リンクで確認)

中退共の新規加入助成は加入後4か月目から1年間、掛金月額の1/2(従業員ごと上限5,000円)の国助成があります。詳細は「制度の特色」の「国の助成があります」を確認してください。(制度の特色) 利回りは「基本退職金(予定運用利回り1.0%前提)+付加退職金」の二本建てですが、支給率は年度により変動し、令和7年度は0です。勤続12か月未満は退職金不支給、12〜23か月は元本割れ、24〜42か月で掛金相当、43か月以降から利息・付加の加算で長期優遇の設計になっています(退職金ページに図表あり)。(退職金)

中退共は併用できる?重複支給の調整は?

社内の退職金規程と中退共を両方導入すると、二重払いになりませんか?
河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
併用は可能です。就業規則・退職金規程に「中退共からの給付を社内退職金に充当する」旨を明記し、支給調整の条項を作っておけば重複は防げます。転換や分割払いの要件も事前に周知しましょう。

最新税制対応:2019通達(50/70/85帯域の線引き)

2019年の 2019通達(法人税基本通達9-3-5の2)では、保険期間3年以上・最高解約返戻率が50%超の定期・第三分野保険で、当初40%期間の資産計上と満期近くの取崩しを帯域別に定めました。具体の資産計上・取崩し期間と割合は国税庁のタックスアンサーで確認できます。(No.5364-2 定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い) また、最高返戻率が70%以下かつ「年換算保険料相当額が一被保険者30万円以下」の場合は、従来どおり期間経過で損金算入を認める取扱いが明記されています。返戻金のない少額契約にも、支払年度の損金算入が認められる30万円枠の運用があります(注記の条件に注意)。(No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い)

年30万円特例の使い所と注意点(2つの“30万円”を区別)

現場で混同しやすいのが「年30万円」の二つの枠組みです。ひとつ目は、最高解約返戻率が70%以下かつ一被保険者の年換算保険料相当額が合計30万円以下の契約は、資産計上の対象外で期間経過損金にできる取扱い。ふたつ目は、返戻金のない定期・第三分野保険で一被保険者の当期支払保険料が合計30万円以下なら、支払年度の損金算入を認める運用です。どちらも「一被保険者ベース」の合算管理が必要で、複数社契約の合計が30万円を超えないよう設計・モニタリングしてください(いずれも上記タックスアンサーに注記あり)。

2021評価通達:名義変更“70%評価”で封じられたスキーム

2019通達後に広まった低解約返戻金型の「名義変更プラン」に対して、2021年の所得税基本通達36-37が改正されました。支給時(名義変更時)の解約返戻金が「支給時資産計上額の70%未満」の場合、評価額は「支給時資産計上額」で行うと明記され、安価譲渡→個人で高返戻を得るスキームは原理的に封じられています。改正の新旧対照は国税庁資料で確認できます。(保険契約等に関する権利の評価) 実務は「法人で解約返戻金を受け、同年度に退職金(役員退職慰労金)を支給して結果相殺」へ回帰。名義変更はガバナンス・税務の両面で慎重対応が必要です。
河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
退職金は“節税”より“設計”。目的を明確にして、制度・税制・資金繰りを同じ地図の上で重ねると失敗が減ります。

退職金の使い分け基準(従業員と役員で分けて考える)

従業員は 退職金 の基礎を中退共で確保し、インフレへの備えや自助の育成は企業型DCやiDeCoで上積み。役員は中退共対象外のため、法人保険で原資を計画的に用意し、退任時に解約返戻金を法人が受け取って退職慰労金を支給するのが王道です。短期勤続者への厳格課税にも注意。令和4年から「短期退職手当等」は300万円超部分に1/2課税の適用がなく、特定役員退職手当等(勤続5年以下の役員の当該期間に対応する退職金)は1/2課税の対象外です。国税庁の具体計算式で事前に試算しましょう。(No.2740 勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等)

設計のチェックリスト(就業規則・会計・税務)

  • 1
    退職金規程に中退共の充当条項、役員退職金の算定根拠(同業類似・功績倍率)を明文化する
  • 2
    保険の解約・退職金支給のタイムラインを“同年度”で設計し、決算の資産計上・取崩しも年次で管理する
  • 3
    資金繰りは平時・有事の二本立てで試算し、保険料水準を利益・キャッシュの範囲に収める
  • 4
    名義変更は原則避け、必要時は取締役会決議・評価額・消費税の非課税売上割合への影響まで確認する

出口設計と会計・税務の段取り(“相殺”の実務)

法人保険の解約返戻金による益金計上と、退職金支給の損金計上は仕訳で直接相殺するのではなく、同一事業年度に“並べる”ことで結果として課税を平準化します。2019通達の資産計上・取崩し期間を守りつつ、退任時期と解約時期をリンクさせるのが成功のポイントです。退職金は源泉・住民税の段取りも前倒しで確認し、就業規則・退職金規程、株主総会・取締役会決議の証跡を整備しておきましょう。

掛金の増額・一時停止の可否(中退共の運用)

業績次第で掛金を増減できますか?一時停止は可能でしょうか。
河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
増額は事前届出で可能で、増額分の1/3を1年間助成(月額18,000円以下が対象)があります。減額は原則不可ですが、資金繰りが厳しい場合は前納や納付猶予・一時停止の相談余地があります。助成・要件は公式の「制度の特色」を確認してください。

失敗事例と防止策(資金繰り・返戻ピーク・過大退職金)

ありがちな失敗は、高額保険料が資金繰りを圧迫、返戻率のピーク時期を誤り予定額を下回る、根拠薄弱な巨額慰労金が過大認定される、名義変更で評価・税務・ガバナンスの火種を抱える——の4点です。導入前のキャッシュフロー試算と、返戻率推移・評価通達の定期点検、退職金の算定根拠の社内文書化が最善の予防策になります。
河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
制度は“経営戦略の一部”。中退共で安心を作り、保険とDCで育て、退職時の出口を整える。足並みが揃うと税務リスクも自然と小さくなります。

まとめと次の一歩(相談の使い方)

自社に合う「基礎×上積み×役員」の配分は、従業員の勤続傾向と財務体力で変わります。一次情報リンクで前提を確認したら、既契約・就業規則・退職金規程を棚卸しして、退職時期と保険の解約・取崩しの年次計画を合わせましょう。迷ったら、オンラインでFPに横断比較を依頼すれば早いです。

まとめ:重要ポイント

  • 1
    中退共は助成・損金の強み。12か月未満不支給・令和7年度の付加支給率0を前提に、上積みはDC等で設計する
  • 2
    法人保険は2019通達の50/70/85帯域・30万円枠に沿って資産計上と取崩しを管理。解約益と退職金は同年度で並べる
  • 3
    名義変更“70%評価”で安価譲渡スキームは不可。評価・ガバナンス・消費税の影響まで含めて慎重に扱う
  • 4
    短期勤続の退職金課税(300万円超部分の1/2不適用、特定役員の1/2不適用)を踏まえ、支給額と時期の根拠を整える

ぜひ無料オンライン相談を

今回の退職金・法人保険・中退共の設計は、制度・税務・資金繰りの三位一体で考えると失敗が減ります。オンラインなら時間・場所の制約なく、既契約の棚卸しから就業規則の整備ポイント、保険とDCの配分比較まで中立に整理可能。無料で相談できるので初回から具体的な数値と段取りを持ち帰れます。次の一歩はLINEから気軽に予約してください。

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