【2025年11月更新】法人保険 節税の真実|損金と繰延の線引き・出口(個別相談可)
更新:
執筆者河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)

法人保険 節税
損金算入
解約返戻金
退職金 出口戦略
税務調査 否認リスク
名義変更 70%ルール
目次
まず結論:いまの“節税”は課税の繰延と資金平準化
2019年の通達以降、法人保険で“永久に税金を減らす”手法は実務上通りません。保険料の一部は前払費用として資産計上し、後年に費用化する前提へ。したがって法人保険の本質は、当期の利益を滑らかにし将来に付け替える課税の繰延と、退職金や死亡時の支出に合わせた資金平準化です。短期の“全損”や“非課税”の思い込みは誤りで、解約・満期・保険金受取という出口で必ず税金の論点に向き合います。
2019年通達後の前提整理(超要点)
- 1返戻率が高い契約ほど当初は資産計上(前払費用)割合が増え、費用は後年に回ります
- 2返戻率50%・70%・85%超の帯域で、損金・資産按分と取崩しのタイミングが機械的に決まります
- 3少額保険(年換算30万円以下かつ最高返戻率70%以下)は例外的に期間対応で当期損金も可能です
- 4“決算直前加入・短期解約・名義変更で個人へ移転”は、否認・課税強化のリスクが高く避けるべきです
損金と繰延の線引き:50・70・85の帯域で決まる
国税庁タックスアンサーでは、保険期間3年以上かつ最高解約返戻率が50%超の定期・第三分野保険は、返戻率帯で資産計上と取崩しを定めています。50%超〜70%以下は保険料の40%を資産、残り60%を損金。70%超〜85%以下は60%を資産(40%損金)。85%超は原則70%(契約から10年以内は90%)を資産計上し、返戻率ピーク後に取崩します。一次情報はこちら:(No.5364-2 定期保険及び第三分野保険の保険料(相当多額の前払部分が含まれる場合))。相当多額の前払部分を含まない一般的な保険料の取り扱いは別掲:(No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い)。
年30万円特例と“3年未満”の扱い
最高返戻率が70%以下かつ一被保険者あたりの年換算保険料が30万円以下なら、“相当多額の前払部分を含まない”ものとして期間対応で当期損金処理が認められます。また保険期間3年未満の定期・第三分野は当期損金が原則です。これらは中小企業の実務で使える“例外ルール”ですが、上限や返戻率の条件を外すと資産計上に戻ります。
「全損にできる商品はもう無いの?」
決算で利益が出そうです。昔のように全額損金にできる保険はありませんか?
2019年以降は返戻率帯で資産計上が必須です。仮に当初の費用割合が高い設計でも、後半で前払費用を取り崩して費用化する仕組みなので“永久に全損”はありません。まずは既契約の返戻率表で帯域を判定し、当期の費用・資産按分を正しく仕訳するのが第一歩です。
商品別チェックと“やりがち”な落とし穴
長期平準・逓増定期など貯蓄性がある商品は、2019年以降は当初の大きな資産計上が前提です。落とし穴は次の2つ。第一に“決算直前の駆け込み加入”や“短期での解約・転換”は、節税偏重と見なされ税務調査で狙われます。第二に“受取人が役員個人”の契約や、法人資金を個人へ移す趣旨が明白な設計は、役員賞与認定や同族会社の行為計算否認のリスクを招きます(法人税法132条の2の枠組み)。実態(事業保障・福利厚生)に即した設計と社内決裁の整備が重要です。
名義変更・転換・払済:評価“70%ルール”に要注意
法人が保険契約の権利を役員・従業員に移す名義変更(支給)では、支給時の解約返戻金が“資産計上額の70%未満”であっても、原則として支給時の資産計上額で評価する改正が導入済みです。低返戻期に個人へ移して直後に解約する“名義変更プラン”は、想定以上の高額課税になりやすく、今日では実務メリットが乏しいのが現実です。評価の一次資料は国税庁「保険契約等に関する権利の評価に関する所得税基本通達の解説」内の規定をご確認ください:(保険契約等に関する権利の評価(70%未満は資産計上額で評価))。
税務調査はここを見る(実務チェックリスト)
- 1加入目的の合理性(事業保障/福利厚生/退職金準備)を稟議・議事録で明文化しているか
- 2受取人の設定は妥当か(原則は法人、遺族受取は福利厚生設計の整合性を確認)
- 3仕訳は通達の帯域どおりか(前払費用・保険料の按分、取崩し期の認識)
- 4証券・設計書・返戻率表・社内規程・決議書を“7年”を目安に一式保存できているか
- 5決算直前の駆け込み、短期解約・転換、名義変更で個人に移す動きがないか
出口判断1:解約益×役員退職金で“同年度”に平準化
解約返戻金は法人の益金となり、その期の利益を押し上げます。一方、適正な役員退職金は損金算入できます。よって“解約益が生じる事業年度に退職金を支給”すれば、法人の税負担を平準化しつつ、会社から個人へ資金を移せます。退職金額は功績・同業水準・規程等のエビデンスで妥当性を担保してください。
出口判断2:退職所得控除“10年ルール”の最新対応
確定拠出年金(企業型DCやiDeCo)の一時金(老齢一時金)と会社の退職金を近い時期に重ねると、退職所得控除の重複適用が制限されます。令和7年度税制改正では、老齢一時金の受給から“前年以前9年内”に退職手当等を受けるケースに調整規定を広げ、記録保存期間も10年に延長。適用は令和8年1月1日以後に老齢一時金の支払を受け、同日以後に退職手当等を受ける場合です。退職金とDC一時金の受取時期は10年ルールを前提に再設計しましょう(一次資料:(令和7年度税制改正の大綱) 6-(4))。
出口判断3:死亡保険金・死亡退職金・相続の非課税枠
受取人が法人なら死亡保険金は益金計上。遺族が受け取る形なら“みなし相続財産”として相続税の対象ですが、相続人が受け取る保険金には「500万円×法定相続人」の非課税限度が使えます(詳細:(相続税の課税対象になる死亡保険金))。会社が保険金を受け取り、遺族に死亡退職金として支給する選択肢もあり、その場合は法人損金+遺族側は退職所得扱いの枠組みが使えます。誰が・いつ・どの税目で負担するかを、家族構成や相続全体の設計と合わせて決めるのがコツです。
“今の法人保険は、今期の利益を隠す道具ではなく、将来の支払いと税負担を合わせる道具です”。出口から逆算し、証跡を整えれば、安全に価値を引き出せます。
数値で理解:ミニ・ケース3つ
ケースA(85%超×30年)では、加入初期は保険料の大半(目安70〜90%)を前払費用に繰り延べ、返戻率ピーク後に均等取崩し。ケースB(解約益2,000万円)は、同年度に役員退職金2,000万円を支給すれば法人税の増加を平準化できます(退職金の妥当性検証は必須)。ケースC(福利厚生プラン)は、全社員加入や受取人設計、規程整備が揃って初めて損金の実効性が担保されます。
今日からの実践3ステップ
第一に、全契約の証券・設計書・返戻率表を棚卸しし、最高返戻率帯(50/70/85超)と年換算保険料の区分判定を行います。第二に、解約・満期・死亡の各シナリオごとに、受取先(法人/遺族/退職金)と実施年度を仮決定。第三に、税理士と仕訳・前払費用の取崩し・社内決裁書類のフローをすり合わせ、運用ルールを社内で共有します。
まとめ:重要ポイント
- 12019年以降の法人保険は、返戻率帯で“損金と前払費用(繰延)”の割合と取崩し時期が機械的に決まります
- 2名義変更や短期解約など“個人への資金移転”を狙う設計は課税強化(70%ルール等)でメリット薄、調査リスクも高いです
- 3出口は“解約益×退職金の同年度平準化”“死亡時の受取人設計と非課税枠”で税目・時期を最適化します
- 4令和7年度改正によりDC一時金と退職金の重複調整が強化(令和8年以降、10年スパンを前提に受取時期を設計)
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