【2025年8月更新】法人保険と経営セーフティ共済の違い|節税と資金繰りの使い分け
更新:

執筆者河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)

法人保険
経営セーフティ共済
倒産防止共済
課税繰延
解約返戻金
資金繰り
退職金
目次
はじめに:改正後の“本当に使える”選び方
2024年10月の改正で、 経営セーフティ共済 は「短期解約・再加入による損金算入の抑制」が入り、実務は明確に変わりました。一方、 法人保険(逓増定期・長期平準)は2019年通達以降、保険料の損金算入に厳格な基準が適用されています。どちらも“節税”というより 課税繰延 の道具。違いを税務とキャッシュフローの両面で整理し、黒字期・赤字期の使い分け、出口での税負担を実務手順に落としていきます。まずは今回の改正点を一次情報で確認しておきましょう。改正の概要は「(お知らせ(2024年10月以降の制度変更))」が基礎資料になります。
まず押さえる最新アップデート(2025年8月版)
- 1経営セーフティ共済は、解約後2年以内の再加入分は掛金の損金算入ができないなど、短期解約の抑制措置が導入されました(2024年10月以降の扱い)。
- 2経営セーフティ共済の掛金は月5,000円〜20万円、累計上限800万円という枠組みは維持され、制度の基本は変わりません(制度概要は後述リンクに集約)。
- 3法人保険は2019年通達に基づき、最高解約返戻率の区分ごとに損金算入割合が判定される前提は継続し、2025年も“返戻重視設計の損金化”は不可です。
- 4申告書への明細添付は、令和7年(2025年)様式で「別表10(8)」に整理されています(年度で番号が変わるため、最新様式は国税庁の一覧で要確認:(別表一覧(令和7年分)))。
- 5“節税”と表現されがちですが、両制度とも利益を平準化するための課税タイミングの調整が主目的で、出口課税まで含めて設計しないと逆効果になり得ます。
誤解しやすい「節税」と「課税繰延」の違い
よくある誤解は、掛金や保険料を損金算入できる=永続的な節税という理解です。実際は、積立段階で損金に落としても、回収段階(解約・満期・共済金)で益金が発生します。つまり、意図は利益の平準化であり、将来の税負担を後ろへずらす 課税繰延 にすぎません。決算の山谷が大きい企業ほど効果が出やすい反面、出口年の税率や他の損益とぶつける設計力が問われます。
制度の土台:仕組みと税務の根本差
法人保険は、契約の種類・最高解約返戻率などに応じて損金・資産計上割合が変わります。2019年の取扱いは「(短期払の定期保険等の保険料の取扱い(個別通達))」「(法人税基本通達等の一部改正(概要))」が基点です。回収時には 解約返戻金 等が益金となり、出口課税が生じます。
一方、経営セーフティ共済は、掛金(月5,000円〜20万円、累計800万円)が全額損金算入(一定の再加入制限あり)。解約した場合の手当金は法人なら原則「益金(雑収入)」に計上されます。所得区分の考え方は公式FAQ「(解約手当金の課税関係(法人・個人))」で確認できます。出口の設計(退職金原資化、欠損金の活用、分散回収など)で負担が大きく変わる点は、両者に共通する実務注意点です。
「結局どちらが“節税”ですか?」
結局、法人保険と経営セーフティ共済のどちらが節税になるんでしょうか?

どちらも恒久的な節税ではなく平準化の道具です。利益の波が大きいなら共済で毎月の損金枠を作り、退職金や事業承継に絡む将来原資には法人保険、といった“役割分担”が現実的です。出口年の税率や欠損金の有無まで見た設計がカギになります。
キャッシュフロー比較:資金化スピードと柔軟性
経営セーフティ共済の掛金は月5,000円〜20万円、累計800万円。掛金は全額損金算入(再加入制限あり)で、資金化は「一時貸付(一解約手当金の最大95%・借入1年・利率は情勢で変動、令和6年4月1日時点 年0.9%)」が使えます(詳細は「(一時貸付金(共済貸付のご案内))」)。本来の共済金(連鎖倒産防止貸付)は取引先倒産時の資金手当てが主眼です。
法人保険は、契約者貸付や質権設定で流動性を確保できますが、返戻のピーク時期・返戻率は商品・設計によって大きく異なります。資金繰りの観点では「いつ・いくら資金化できるか」を時系列で見える化し、金融機関との与信や担保の取り扱い可否を事前に確認することが重要です。
資金繰り表に落とすチェック項目
- 1毎月の拠出上限(共済は月20万円・累計800万円)と黒字幅の整合を確認し、3年先までの資金繰りに無理がないかを点検します。
- 2法人保険は返戻ピーク時期と返戻率帯を把握し、解約・部分解約・貸付のどれで資金化するかを“順番”で設計します。
- 3共済の一時貸付は更新上限と利率を確認し、別枠の運転資金ライン(銀行融資)との役割分担を決めます。
- 4出口課税の当期影響(共済の解約手当金=益金、保険の解約差益=益金)を、欠損金や特別損失と相殺できるかで試算します。
- 5申告手続き(別表・内訳書・注記)と証跡(稟議・設計書・議事録)を、決算月の2か月前までに整えます。
ケース別使い分け:黒字拡大期・赤字転落時・承継連動
売上変動が大きい業種(建設・製造の受注偏重、広告・ITの単発大型案件など)は、月次で損金化できる共済が“ブレーキ”役として有効です。黒字拡大期は共済の上限枠まで積み、資金繰りに応じて法人保険で退職金原資を別枠管理。赤字転落時は共済を解約して益金を発生させつつ、欠損金や特別損失とぶつける設計を優先します。事業承継や役員退職金と連動させる場合は、法人保険の保険金・返戻金の受取時期を退任スケジュールに合わせ、受給額と税率(所得区分)を最適化しましょう。

短期解約を前提にした“拠出→即回収”は、今のルールではコスト高・否認リスク高です。出口まで一筆書きで設計しましょう。
よくあるNGとコンプライアンスの実務
短期解約前提の拠出は、共済でも法人保険でも“狙いが節税のみ”と見なされやすく、税務上リスクが高まります。共済は2024年10月以降、解約後2年以内の再加入分が損金不可。法人保険は2019年通達以降、返戻率重視の高損金設計が否認対象です。過度な節税訴求は社内ガバナンスも損ない、銀行与信でも“持続性”が評価されません。税務調査で問われるのは、意思決定過程(稟議)と、資金繰り・人件費・退職金計画との合致です。制度・税制は将来変わり得るため、年1回の方針確認を習慣にしてください。
どちらから着手するべき?
今期は黒字が増えそうです。まずは共済か、法人保険か、どちらから始めるのが良いですか?

決算2か月以上前に資金繰り表を更新し、共済の月額と累計、法人保険の返戻時期を並べて比較しましょう。運転資金の平準化を共済で先に確保し、退職金や承継原資は法人保険で別管理、という“二段構え”が実務では安定的です。
実行ロードマップ(最短3か月)
1か月目は、現金比率・運転資金回転日数を再測定し、月次の損金余力を可視化。2か月目は、税理士×FP×経営の三者で設計会議を行い、共済と法人保険の役割分担・出口年(解約・受給)の当て先を決定。3か月目は、商品・共済の具体選定、議事録と“出口の文書化”まで完了し、別表・内訳書のひな型を用意します。税制・関係法令は変更され得るため、半期ごとの見直し前提で進めましょう。

入口(拠出)よりも、出口(受取・課税)と帳票(別表・稟議)を先に決める。これが失敗を減らす最短ルートです。
申告と証跡:別表の番号に注意
経営セーフティ共済の掛金損金は、法人税申告書で明細計上が必要です。令和7年(2025年)様式では「別表10(8)」に統合されていますが、年度により様式番号は変遷します。最新は国税庁の様式一覧で必ず確認し、金額根拠(納付書・掛金証明)と意思決定の稟議・議事録をセットで保存しておきましょう。
最後に:迷ったら専門家に相談を
迷いどころは、いつ・いくら・どの口(共済/解約返戻/保険金)で受けるか、です。単年度最適ではなく、5年スパンのPL・BSと税率を見て設計すると失敗が減ります。弊社の無料オンライン相談「ほけんのAI」なら、AI×有資格FPが家計と法人の両面を同時に整理。LINEで予約から完結し、初回から資金繰り表と出口案まで一緒に作れます。限定キャンペーンでギフトBox進呈中、迷ったらまずはAI相談から始めてください。
まとめ:重要ポイント
- 1共済は月次損金で資金繰りを平準化、法人保険は退職金・承継など目的原資を設計し、両者の役割を分けて使います。
- 2“節税”ではなく課税繰延であることを前提に、出口(受取時期・所得区分・相殺相手)まで一筆書きで設計します。
- 3短期解約・再加入制限(共済)や2019年通達(法人保険)の条件を踏まえ、稟議と証跡を整えます。
- 4資金繰り表に拠出上限・返戻ピーク・貸付枠を並べ、欠損金や特損との相殺可能性を期首に試算します。
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