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【2025年9月更新】生命保険の遺留分|対象基準と請求手順と判例整理(個別相談可)

更新:
河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
執筆者河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
【2025年9月更新】生命保険の遺留分|対象基準と請求手順と判例整理(個別相談可)
生命保険 遺留分
遺留分侵害額請求
受取人固有財産
平成16年 最高裁
生命保険 特別受益
内容証明 遺留分
家庭裁判所 調停

まず押さえる:なぜ“生命保険の遺留分”が揉めるのか

相続の現場で混乱が生じやすいのは、遺留分の計算に生命保険金を入れるべきか、入れないべきかの線引きが直感と異なるからです。生命保険金は原則として相続財産ではなく、受取人の手に“直接”渡るため、遺産分割と別建てで動きます。一方で、残された家族間の公平を崩すほど偏った金額が支払われたときは、例外的に遺留分の計算に組み込まれることがあります。本稿は、その例外の見分け方と、請求の進め方、近年の裁判の傾向まで、実務の“迷いどころ”を一つずつ解消します。

初動アクションプラン(7日でここまで)

  • 1
    保険証券・支払通知・通帳を1か所に集め、保険金額と受取人、支払日を一覧化する。
  • 2
    法定相続人と遺産の概算を出し、保険金の遺産総額に対する比率をラフに計算する。
  • 3
    被相続人の保険料拠出源(本人資金か、受取人資金か)と加入時期・目的のメモを作る。
  • 4
    遺言書の有無・内容を確認し、保険加入との時系列関係を整理する。
  • 5
    遺留分の“意思表示”文案を作成し、内容証明で出す日付候補を決める。

2019年改正を踏まえた遺留分の基本と期限

2019年の相続法改正後、遺留分侵害額請求は“お金で請求する権利”になりました。相手方と合意できなければ、家庭裁判所の調停を利用できます。時効は「侵害事実を知ったときから1年」、除斥は「相続開始から10年」。制度の全体像は法務省の案内がわかりやすいです。(相続に関するルールが 大きく変わります) また、家庭裁判所のページには、申立先・費用・必要書類が整理されています。重要なのは、調停の申立て“だけ”では意思表示にならないため、別途、内容証明などで意思表示が必要という点です。(遺留分侵害額の請求調停)(収入印紙1,200円が目安)。

保険金は相続財産? 遺留分に入る?

保険金は相続財産じゃないと聞きました。それなら遺留分の計算にも入らないのですよね?
河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
原則はその理解で正しいです。ただし、保険金が遺産に比べて極端に大きいなど、著しい不公平が出る特段の事情があるときは“例外”として遺留分の算定に入る可能性があります。次で線引きの枠組みを説明します。

法的位置づけ:受取人固有財産の原則と著しい不公平の例外

生命保険金は原則、受取人固有財産で相続財産ではありません。けれども、平成16年の最高裁決定は、保険金額・遺産総額に対する比率・被相続人と相続人の関係・各相続人の生活実態などを総合し、「到底是認できないほど著しい不公平」があれば、特別受益に準じて遺留分の計算基礎に“持戻す”ことを認めました。(裁判例結果詳細 | 裁判所)(最二小決 平成16年10月29日)。

2025年の判例トレンド:比率だけで決まらない

枠組み自体は平成16年最高裁決定から不変ですが、近年の下級審は事情総合の幅が広がっています。例えば、遺産総額に対する保険金の比率が約15%でも、加入時期が相続に近接、一時払いで投資性が強い、遺言の配分を実質的に掘り崩す、などの事情が重なり持戻しが認められた例があります(東京地裁令和5年12月1日判決の解説)。(相続・事業承継UPDATE Vol.4:死亡保険金の額が遺産総額の約15%にとどまる…) 一方で、夫婦の生活保障として相応の範囲(例:2,000万円前後)・保険料の生活費からの定期払い・長年の同居扶養などがあれば持戻し否定の例もあります。結論は「比率×事情」で決まる、が実務の実感です。
河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
比率は入口です。加入の目的や誰のお金で、いつ、なぜ契約したか──背景の“物語”が裁判所の心証を動かします。

算入可否の判断軸:現場で迷わない5観点

例外が視野に入るかの初期判断は、次の5観点で十分です。(1)保険金の“額”は相対的に多額か、(2)遺産総額に対する“比率”はおおむね3分の1を超えるか(超えなくても他事情で覆る余地)、(3)“拠出”は誰の資金か(被相続人資金か受取人資金か)、(4)“加入経緯”は相続直前の一時払い等で投資性が強くないか、(5)“生活保障”や介護寄与など受取人側の事情はあるか。これらを事実で埋めれば、交渉材料が整います。

必要書類チェックリスト(揃えば交渉が前に進む)

  • 1
    保険証券・支払通知・約款の該当条項の写しを用意し、保険金の性質と支払条件を確認する。
  • 2
    通帳の入出金履歴で保険料の拠出源を追い、誰の資金かの証跡を確保する。
  • 3
    遺言書(検認調書を含む)と保険加入の時系列を並べ、配分の“掘り崩し”有無を可視化する。
  • 4
    相続人全員の戸籍・法定相続情報一覧図・遺産目録のたたき台を作る。
  • 5
    介護・生計維持・扶養実績のメモや証憑(同居・送金・介護記録等)を集める。

遺留分の試算プロセス:計算は“基礎財産の線引き”から

ステップは3つです。1)遺留分算定基礎=相続時の積極財産+一定の生前贈与(原則、相続人は10年・第三者は1年)−債務。ここに保険金を“入れるか”が最大論点。2)遺留分=基礎財産×(2分の1※直系尊属のみは3分の1)×法定相続分。3)侵害額=遺留分−(特別受益+取得財産)+(負担債務)。制度の公式と起算点は法務省の資料を必ず確認しましょう。(相続に関するルールが 大きく変わります) 注意点は、仮に“保険金の全部”が基礎に入ると金額が跳ね上がること。交渉では、額・比率・拠出・加入目的・生活保障を根拠資料で詰め、持戻し要否の認定争いから入るのが王道です。

請求の段取り:内容証明→調停→訴訟の順番と費用目安

実務の順番は、1)意思表示(内容証明):遺留分権の行使意思を明確にし、時効1年を止めます。2)任意交渉:算定根拠と事情を提示し、分割払い・期限猶予も含めて合意を探る。3)家庭裁判所の調停:相手方住所地管轄、収入印紙1,200円+郵券。重要なのは、調停申立て“だけ”では意思表示にならないこと。4)訴訟:調停不成立なら訴訟で決着(遺留分は審判ではなく訴訟で終局)。実務の要点と申立書式は裁判所サイトが便利です。(遺留分侵害額の請求調停)

第三者や孫が受取人のときは? 法人名義は?

受取人が孫(相続人でない)や法人です。遺留分に保険金は入りますか?
河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
原則は同じで、保険金は受取人の固有財産です。ただし、被相続人資金で相続直前に多額の一時払い等があれば、“著しい不公平”として基礎財産に入る可能性はゼロではありません。誰の資金で、何の目的で、いつ契約したかが勝負どころです。

紛争予防の設計:伝わる配慮と“説明責任”

予防の核心は、「後に理由が伝わる設計」です。受取人の分散(配偶者+子)、加入目的のメモ(生活保障・事業承継・葬儀費用等)、遺言での説明(遺産配分との整合)、保険信託の活用(生活費の定期給付や使途指定)など。被相続人資金の一時払いは誤解を招きやすいので、拠出源は通帳で“見せられる化”を。設計時は、税(非課税枠500万円×法定相続人)や贈与の新ルールとも整合を取りましょう。
河又 翔平 (保有募集人資格:一般課程・専門課程・変額課程)
誰が見ても「そうだよね」と思える理由付けを、契約・遺言・通帳の3点セットで残しましょう。未来の家族会議が穏やかになります。

ケーススタディで線引きを体感

長男のみ受取人・遺産小口:遺産2,000万円、保険金3,000万円。比率60%、被相続人資金の一時払い。ほか相続人の生活困難が見込まれる──例外算入の交渉余地が大きい。 後妻全額受取・前婚子あり:保険金2,000万円、長年同居・扶養、保険料は給与口座から定期払い。遺産は別途6,000万円を子に遺贈──生活保障の趣旨が強く、算入否定の主張が通りやすい。 孫が受取人・保険料は祖父負担:相続半年前の一時払い1,500万円、遺産総額7,000万円(比率約21%)、遺言で子の取り分が減少──事情次第で算入主張に現実味。加入目的の説明資料がカギ。

よくある質問Q&A(実務で迷いがちな3点)

内縁・法人など非相続人が受取人の場合:原則は固有財産。ただし他事情とセットで“著しい不公平”がポイント。誰の資金か・加入目的・時期が弱点になりやすい。 死亡退職金や弔慰金との違い:多くは受給権者の固有財産として相続財産ではなく、遺留分の基礎にも原則入りません。もっとも、制度趣旨は生活保障です。保険と同じく、過大・近接・拠出源などの事情総合で論点化する余地があることは理解しておきましょう。 相続放棄と遺留分の関係:相続放棄をすると遺留分権は原則失われます。放棄の前に遺留分問題の見立てを。放棄の要否は、債務超過・争いの見込み・家裁手続のスケジュールを含めて慎重に判断しましょう。

まとめ:重要ポイント

  • 1
    生命保険金は原則相続財産に含めないが、額・比率・拠出・加入経緯・生活保障などの事情総合で“例外算入”があり得る。
  • 2
    請求は時効1年・除斥10年が壁。調停申立てだけでは意思表示にならないため、内容証明での行使通知を最優先に行う。
  • 3
    比率3分の1超は要注意だが、近年は15%でも例外算入が認められた例がある。背景の“物語”を資料で整える。
  • 4
    交渉の土台は証券・通帳・遺言・時系列の整備。保険料の拠出源と目的の立証が勝敗を分ける。
  • 5
    予防は設計時の説明責任と分散、保険信託・遺言の併用で“納得感”を高める。

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