【2025年12月更新】就業不能保険 共働き30代|収入減に備える設計3ステップ
更新:
執筆者山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)

就業不能保険
共働き30代
収入保障保険
傷病手当金
育児時短就業給付金
育児休業給付金
遺族厚生年金
目次
はじめに:二馬力でも家計は脆い、だから“収入を守る設計”を
共働き30代は二馬力前提で家計を組みがちです。ところが、一方が休職・長期療養・メンタル不調になると、もう一方の収入だけでは赤字化しやすく、貯蓄の取り崩しに直結します。実務では、健康保険の傷病手当金(最長1年6か月・待期3日)や2025年4月に始まった育児時短就業給付金(原則10%)など公的給付で“当面”は支えられても、中長期の不足が残ることが多いのが現実です。本記事は、最新制度を踏まえ、就業不能保険と収入保障保険の役割分担で“足りない分だけ”を埋める3ステップ設計を、実践目線で解説します。
共働き30代で起こりやすい収入減リスク
- 1病気・けがで長期休職し、手取りが約3分の2(傷病手当金相当)に低下する
- 2うつ病などのメンタル不調で長期離職・再発を繰り返し、復職時期が読めない
- 3出産・育児で育休・時短勤務により、世帯の可処分所得が一時的に縮む
- 4親の介護・看護で片方が離職・時短し、家計とケア費用の二重負担が発生
公的制度の最新ポイント(2025年時点)
休職・育児に関わる主要制度は、ルールを知っておくと設計が一気に進みます。リンク先で一次情報の詳細を確認しましょう。
- 健康保険の傷病手当金は「待期3日」後に支給、支給期間は“通算”で最長1年6か月へ改正済みです。(令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます)
- 2025年4月に新設の雇用保険「育児時短就業給付金」は、2歳未満の子の育児で短時間勤務する際に賃金の原則10%相当を支給します(要件・上限あり)。(育児時短就業給付金リーフレット)
- 育児休業給付金は、休業開始から180日目までは原則67%、その後は50%(賃金日額・上限あり)。会社の制度と合わせて時期・額を把握しましょう。
- 2028年4月に予定される遺族厚生年金の見直しでは、子のいない若年配偶者への給付が原則5年の“有期”へ。設計の前提が変わります。(遺族厚生年金の見直しについて)
- 精神疾患の休復職は再発リスクや給付の“通算”管理に注意。制度のQ&Aも併せて確認を。(第7回 こころの病で再休職した場合、傷病手当金を再度支給できる仕組みはあるの?)
免責期間は何日にすべき?会社員と自営業で違いますか?
会社員の夫が休職になったら、就業不能保険の免責期間はどのくらいが妥当ですか?自営業の私にも必要でしょうか。
会社員なら、まず傷病手当金(待期3日後に最長1年6か月)で“前半”を支える想定に合わせ、免責は60日や90日にする例が多いです。自営業は傷病手当金が無いので、30日や0日で“早めの開始”を優先。いずれも公的給付と貯蓄残高を重ねて、空白が生じない日付設計が肝です。
設計ステップ1:現状を“お金”で見える化する
最初に、休職が起きた月から12〜24か月のキャッシュフローを作ります。家賃・ローン・食費・保育料など“固定費”を洗い出し、片方の手取り+公的給付(傷病手当金・育休給付・時短給付)でどこまで賄えるかを月次で試算。差額が継続する月が“保険で埋める必要のあるゾーン”です。企業の休業補償(有給・病気休暇・GLTD)がある場合は、期間と割合を就業規則で必ず確認しましょう。
設計ステップ2:“差額×期間”で必要額を決める
不足額の決め方はシンプルです。想定手取り(配偶者の収入+公的給付)から必要生活費を引き、残る“差額”に必要な“期間”を掛け合わせます。前半18か月は傷病手当金が効く会社員なら、保険の月額は小さめに、18か月後は増やす(または一定額で長期)という二段構えも有効です。死亡に備える場合は、住居費・教育費・生活費から遺族年金・会社の給付・残る収入を差し引き、残りを定期保険(一時金)と収入保障保険(毎月型)で役割分担すると、保険料効率が上がります。
公的給付と貯蓄で賄える分は保険に頼らない。空白だけを埋める設計が、ムダのない家計をつくります。
設計ステップ3:就業不能保険の要点を押さえる
就業不能保険は“定義”と“開始・期間”で支払可否が決まります。就業不能の定義(入院・在宅療養・医師の指示の扱い)、精神疾患の支払可否や通算制限、支払対象外期間(免責30/60/90日など)、給付期間(満了年齢・最低支払保証の有無)を約款で確認。会社員は免責長め+長期保障で保険料を抑えやすく、自営業は免責短め+短中期の厚め設定が現実的です。夫婦で“誰にどれだけ配分するか”も、公的給付の差(傷病手当金の有無)を軸に決めましょう。
商品選びのチェックポイント(比較時に必ず確認)
- 1就業不能の定義と対象範囲(在宅療養・要介護・メンタルの扱い)
- 2支払対象外期間(免責)と給付開始の起算、最低支払保証の有無
- 3精神疾患の通算制限・除外条件があるか、再発時の扱い
- 4給付期間(60/65/70歳など)と途中復職時の支払継続条件
- 5一時金・復職支援・健康増進割引などの特約・割引の実用性
家計タイプ別ケーススタディ(設計の考え方)
数値は一例です。実額は手取り・家賃・教育費・会社制度で変わります。
- 乳幼児あり・賃貸の共働き(会社員×会社員): 前半18か月は傷病手当金と育休給付・児童手当で“最低限”を維持。就業不能保険は免責60〜90日、月8〜15万円を65歳まで。死亡は収入保障で生活費、定期保険で一時支出をカバー。
- 持ち家・ペアローン世帯: 団信で片方の債務は消えても、もう一方の返済は残る。就業不能はローン返済+生活費の“差額”を月10〜15万円、65歳まで。死亡は収入保障保険の満了年齢を“子の独立+5年”など余裕を持って設定。
- フリーランス×会社員の夫婦: 自営業側は傷病手当金が無いので免責0〜30日で早期開始、月10〜20万円を5〜10年の厚め設計。会社員側は免責60日・長期薄めで保険料を抑制。死亡は自営業側に一時金多め+収入保障も上乗せ。
見直しタイミングと実践手順
出産・復職・転職・住宅購入は“再設計”の合図です。設計の手順は、①家計の固定費・貯蓄・投資の棚卸し、②勤務先の休業補償・就業規則の確認、③公的給付の要件・上限の再確認(傷病手当金・育休給付・時短給付・遺族年金)、④保険の見積り比較(同条件で複数社)、⑤証券と家族連絡網の更新。2028年の遺族厚生年金“原則5年有期”は、若年夫婦の前提を変えるため、収入保障の満了年齢や最低支払保証の有無を合わせて見直すのが安全です。
会社員と自営業、どちらを優先的に厚く備えるべき?
夫婦で会社員と自営業。限られた保険料なら、どちらを厚くすべきですか?
原則は“公的給付の薄い側”を厚く。自営業は傷病手当金が無く、雇用主の休業補償も限定的なので、免責短め+月額厚めが優先です。一方、会社員は免責長め+長期薄めでトータル最適化を狙いましょう。
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まとめ:重要ポイント
- 1傷病手当金・育休・時短給付など“いまの制度”を月次キャッシュフローに落とし込み、足りない期間と額を見える化する
- 2就業不能保険は定義・免責・期間・精神疾患の扱いを約款で確認し、会社員は長期薄め・自営業は早期開始で厚めが基本
- 3死亡リスクは定期(一時金)×収入保障(毎月型)の役割分担で“差額×期間”だけを埋め、団信との重複を外す
- 4ライフイベントと2028年の遺族厚生年金見直しをトリガーに、満了年齢・最低支払保証・割引を定期的に再設計する
- 5迷ったらLINEで無料のFP相談を活用し、同条件の複数見積りと家計全体の配分(保険×投資)を中立に検討する
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