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【2026年9月更新】遺族厚生年金|65歳妻の受取額と生命保険3基準

更新:
山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)
執筆者山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)
【2026年9月更新】遺族厚生年金|65歳妻の受取額と生命保険3基準
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65歳以降の遺族厚生年金は「夫の年金の4分の3」だけでは決まりません

夫に先立たれたとき、65歳の妻が受け取るお金は「遺族厚生年金はいくらか」だけでなく、自分の老齢基礎年金、自分の老齢厚生年金、夫の厚生年金記録との調整で決まります。
特に65歳以降は、自分の老齢厚生年金が優先して支給され、遺族厚生年金は差額だけになる仕組みがあります。つまり、夫の報酬比例部分の4分の3をそのまま上乗せできるとは限りません。
この記事では、 遺族厚生年金 の65歳妻の受取額をざっくり試算する考え方と、生命保険で補うべきかを判断する3基準を整理します。2028年4月施行予定の見直しについても、「65歳妻は5年で打ち切られるのか」という不安に答える形で確認していきます。

この記事で確認できること

  • 1
    65歳妻が受け取る遺族厚生年金の基本的な計算順序がわかります。
  • 2
    自分の老齢厚生年金がある場合に、遺族厚生年金が差額支給になる理由を確認できます。
  • 3
    2028年4月施行予定の見直しが、65歳妻にどう関係するかを整理できます。
  • 4
    生命保険を残すべきか、減らすべきかを毎月の不足額と一時金ニーズから判断できます。

まず押さえる基本:遺族厚生年金の年金額は原則「報酬比例部分の4分の3」

日本年金機構の2026年6月更新情報では、遺族厚生年金の年金額は、原則として亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3とされています。報酬比例部分とは、会社員・公務員として働いた期間や給与水準に応じて決まる厚生年金部分のことです。
詳しい受給要件や対象者は、日本年金機構の(遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額))で確認できます。
ただし、65歳以上の妻が自分の老齢厚生年金を受け取れる場合は、ここから調整が入ります。ここが「夫の年金の4分の3を足せると思っていたのに、実際は少ない」と感じやすいポイントです。なお、ここでいう年金額は原則として税金や社会保険料を差し引く前の金額です。遺族年金自体は非課税ですが、老齢年金や健康保険料・介護保険料を含めた手取りは別に確認しましょう。

夫の年金の4分の3が丸ごともらえるわけではないのですか?

夫の厚生年金が年120万円くらいなら、私はその4分の3の年90万円をそのまま受け取れると思っていました。違うのですか?
山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)
65歳以降は、まずご自身の老齢厚生年金が全額支給されます。そのうえで、遺族厚生年金の計算額がご自身の老齢厚生年金を上回る場合だけ、差額が上乗せされるイメージです。老齢基礎年金は別枠で受け取れます。

65歳妻は「自分の年金が先、遺族厚生年金は差額」が基本

65歳以降は、まず妻自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ります。そのうえで、遺族厚生年金の計算額から妻自身の老齢厚生年金に相当する額が支給停止され、残った差額が遺族厚生年金として支給されます。
計算の順番は、次のように考えると整理しやすくなります。まず、夫の報酬比例部分の4分の3を計算します。次に、65歳以上で妻自身の老齢厚生年金がある場合は、「夫の報酬比例部分の4分の3」と「夫の報酬比例部分の2分の1+妻自身の老齢厚生年金の2分の1」を比べ、高いほうを遺族厚生年金の額として使います。最後に、妻自身の老齢厚生年金が優先されるため、その分を差し引いた差額が実際の遺族厚生年金になります。
一方、妻自身の老齢厚生年金が十分に大きい場合、遺族厚生年金は一部または全額支給停止になることがあります。これは損をしているというより、65歳以降の年金制度では自分で納めた厚生年金を優先して反映する仕組みになっているためです。
山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)
遺族厚生年金が多いか少ないかよりも、住居費、食費、医療費、介護予備費を払ったあとに生活が続くかを確認することが大切です。

65歳妻の受取額をざっくり試算する例

具体例で見てみましょう。ここでは、妻は65歳、夫の老齢厚生年金の報酬比例部分が年120万円、妻自身の老齢厚生年金が年30万円とします。
遺族厚生年金の基本額は、120万円×4分の3で年90万円です。もう一つの計算式である「夫の報酬比例部分の2分の1+妻自身の老齢厚生年金の2分の1」は、120万円×2分の1+30万円×2分の1=年75万円です。高いほうは年90万円なので、この年90万円が調整前の遺族厚生年金額になります。
65歳以降は妻自身の老齢厚生年金30万円が先に支給されるため、遺族厚生年金として追加されるのは90万円−30万円=年60万円です。
日本年金機構の(令和8年4月分からの年金額等について)によると、2026年度の老齢基礎年金の満額は、昭和31年4月2日以後生まれで月70,608円、年847,296円相当です。年金額の表示では年847,300円として扱われます。仮に妻が満額に近い老齢基礎年金を受け取れるなら、年間の合計は約84.7万円+30万円+60万円=約174.7万円、月額では約14.6万円が目安です。
ただし、昭和31年4月1日以前生まれの人は満額が月70,408円と異なります。また、加入期間が40年に満たない場合、繰上げ・繰下げをしている場合、振替加算や経過的寡婦加算が関係する場合は、実際の金額が変わります。

生命保険で補うべきかを見る3基準

  • 1
    毎月の生活費から、公的年金と預貯金で埋められない不足額を確認します。
  • 2
    葬儀費用、医療費、介護費、住み替え費用など、一時的にまとまって必要なお金を見積もります。
  • 3
    死亡保険金の受取人、相続税の非課税枠、保険料負担を確認し、家族が使いやすい形で残せるかを見直します。

妻自身の厚生年金が多いと、遺族厚生年金は少なく見える

次に、妻自身も長く会社員として働き、老齢厚生年金が年100万円あるケースを考えます。夫の報酬比例部分が同じく年120万円なら、4分の3は年90万円です。
ただし、65歳以降は「夫の報酬比例部分の4分の3」と「夫の報酬比例部分の2分の1+妻自身の老齢厚生年金の2分の1」を比べます。この例では、120万円×2分の1+100万円×2分の1=年110万円となり、年90万円より高くなります。
妻自身の老齢厚生年金100万円が先に支給されるため、遺族厚生年金として追加されるのは110万円−100万円=年10万円です。合計は、老齢基礎年金約84.7万円+老齢厚生年金100万円+遺族厚生年金10万円で、年約194.7万円です。
このように、妻自身の厚生年金が多いほど、遺族厚生年金の「上乗せ分」は小さく見えます。ただ、世帯としては妻自身の老齢厚生年金が土台になるため、生命保険の必要額はむしろ下がることがあります。

65歳からでも生命保険は必要ですか?

子どもは独立しています。65歳以降でも夫の死亡保険を残したほうがいいのでしょうか?
山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)
生活費の不足が少なく、預貯金も十分なら大きな死亡保障は不要なことがあります。一方で、妻の年金が少ない、賃貸住まい、介護や住み替えの不安がある場合は、一時金としての生命保険を残す意味があります。

2028年4月予定の見直し:65歳妻は影響を受けるのか

2028年4月施行予定の遺族厚生年金見直しでは、子のない配偶者の有期給付化が注目されています。厚生労働省の(遺族厚生年金の見直しについて)では、法律は2025年6月に成立し、遺族厚生年金の見直しは2028年4月施行予定と説明されています。
同ページでは、見直しの影響を受けない人として、すでに遺族厚生年金を受給している人、60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する人、18歳年度末までの子を養育する間にある人、2028年度に40歳以上になる女性などが挙げられています。
そのため、この記事のテーマである65歳妻のケースでは、2028年見直しによって突然5年で打ち切られる、という理解は基本的に当てはまりません。
ただし、50代以下の夫婦、子どものいない共働き夫婦、年齢差のある夫婦では影響が変わります。特に、配偶者が亡くなる時期が60歳未満か60歳以降か、18歳年度末までの子がいるかによって扱いが変わるため、同じ「遺族厚生年金」でも自分の世帯に置き換えて確認する必要があります。

基準1:毎月の不足額は「年金見込額−生活費」で見る

生命保険を考えるとき、最初に見るべきなのは死亡保険金の大きさではなく、毎月の不足額です。65歳妻の場合、年金収入は老齢基礎年金、老齢厚生年金、遺族厚生年金の差額支給で構成されます。
たとえば年金合計が月14.6万円、生活費が月22万円なら、月7.4万円の不足です。1年で約88.8万円、10年で約888万円になります。預貯金で十分に埋められるなら、死亡保障を大きく残す必要は下がります。
生活費の目安として、総務省統計局の(家計調査報告 2025年平均結果の概要)では、65歳以上の単身無職世帯の消費支出は月148,445円、非消費支出を含めた不足分は月29,980円と示されています。これは全国平均であり、家賃がある人、医療・介護費が増えやすい人、車を持つ人は不足額が大きくなりやすい点に注意しましょう。
山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)
遺族厚生年金の仕組みを理解すると、必要な保障と不要な保障が分かれます。不安を保険で全部埋めるのではなく、不足額だけを具体的に補う考え方が家計を守ります。

基準2・3:一時金ニーズと受取人設定まで確認する

遺族厚生年金は毎月の生活費を支える制度ですが、まとまった支出には弱い面があります。葬儀費用、墓じまい、引っ越し、住宅修繕、医療費、介護サービスの初期費用などは、発生時期が読みにくく、年金だけで準備しにくい支出です。
このような支出に備えるなら、死亡保険金を一時金で受け取れる生命保険は選択肢になります。特に預貯金を取り崩すと老後資金が不安になる世帯では、生活費用の年金と、一時支出用の保険金を分けて考えると整理しやすくなります。
また、国税庁の(相続税の課税対象になる死亡保険金)では、相続人が受け取る死亡保険金について「500万円×法定相続人の数」まで非課税限度額があると説明されています。相続税が必ず発生するわけではありませんが、受取人を指定でき、比較的早く現金化しやすい点は、預貯金やNISAとは違う強みです。
一方で、保険料が高くなりすぎると現在の家計を圧迫します。65歳前後で新たに大きな保障に入るより、既契約の減額、払済、受取人変更、解約返戻金の確認を含めて見直すほうが現実的な場合もあります。

NISA・預貯金・生命保険は役割を分ける

65歳以降の家計では、NISAや預貯金、生命保険を同じ「老後資金」として一括りにしないことが大切です。NISAは運用益が非課税になる制度で、長期の資産形成には向きますが、元本保証ではありません。生活費として数年以内に使う予定のお金を大きく値動きする資産に寄せすぎると、取り崩し時期によっては家計が不安定になります。
預貯金はすぐ使える安心感がある一方、増やす力は限定的です。生命保険は、契約内容によっては死亡時にまとまった資金を家族へ渡しやすい一方、途中解約すると元本割れする商品もあります。
つまり、日常生活費は年金と預貯金、長期資産はNISA、一時的な死亡後資金は生命保険というように、目的別に置き場所を分けると判断しやすくなります。

65歳妻の見直しでありがちな落とし穴

よくある落とし穴は、夫婦どちらか一方のねんきん定期便だけを見て判断してしまうことです。65歳妻の受取額は、夫の報酬比例部分だけでなく、妻自身の老齢厚生年金、老齢基礎年金、加入期間、繰下げの有無、加給年金や振替加算の有無などによって変わります。
また、65歳になる前に受け取れることがある中高齢寡婦加算は、原則として65歳までの加算です。65歳以降は老齢基礎年金に切り替わるため、「以前聞いた金額」と「65歳以降の金額」が違うことがあります。昭和31年4月1日以前生まれの妻には経過的寡婦加算が関係する場合もありますが、2026年に65歳になる妻は原則として対象世代ではありません。
生命保険を「もったいないから全部解約」と決めるのも注意が必要です。古い契約には予定利率が高いものや、健康状態によっては再加入が難しい契約もあります。逆に、保障額が大きすぎて保険料が重く、老後の生活費を圧迫しているなら、保障を整理する価値があります。

相談前に準備しておくとスムーズな書類

65歳前後で遺族厚生年金と生命保険を見直すなら、年金と保険の情報をそろえるだけで相談の精度が上がります。年金は、ねんきん定期便、年金見込額、夫婦それぞれの基礎年金番号がわかる書類があると便利です。
生命保険は、保険証券、保障内容のお知らせ、保険料控除証明書、契約者・被保険者・受取人がわかる書類を用意しましょう。保険証券の写真を撮っておくだけでも、相談時に保障額、保険期間、解約返戻金の有無を確認しやすくなります。
家計面では、毎月の生活費、住居費、医療費、預貯金、NISAやiDeCoの残高もわかる範囲で十分です。完璧な家計簿がなくても、ざっくりした支出を書き出すだけで判断材料になります。年金の正式な請求や個別の受給可否は、年金事務所や街角の年金相談センターで確認するのが確実です。

まとめ:重要ポイント

  • 1
    65歳以降は自分の老齢厚生年金が優先され、遺族厚生年金は差額支給になるのが基本です。
  • 2
    夫の報酬比例部分の4分の3が目安ですが、妻自身の老齢厚生年金との調整で実際の上乗せ額は変わります。
  • 3
    2028年4月予定の見直しは、60歳以降に受給権が発生する人や既受給者などには基本的に影響しないとされています。
  • 4
    生命保険は、毎月の不足額、一時金ニーズ、受取人・相続税非課税枠の3基準で見直すと判断しやすくなります。
  • 5
    年金見込額、生活費、預貯金、保険証券を並べると、残すべき保障と減らせる保障が見えやすくなります。

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